コミックマーケット74に出品します
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今日は紫苑がお泊まりで女子寮に遊びに来た。
寮母さんにお客さんが来ると言うと夕食を用意してくれた。
みんなで夕食を食べながら紫苑がにこにこと話を始めた、
「瑞穂さん、今日はパジャマパーティーと言う事で、いろいろとナイトウェアをもってきましたわ」
「へえ。紫苑さんは衣装持ちなんですね」
「母の花嫁学校で使っている余りなんですけどね」
「花嫁学校かあ、何教えてくれるのかなあ」
まりやは花嫁学校にちょっと興味があるようだ。
「ええと、料理、裁縫、礼儀作法だけではなく殿方を喜ばせる夜伽の作法なんかもあるのですよ」
「おおー、夜伽ですかー、うふふ。紫苑さまもお勉強されているんですよねえ」
「ええ、では後ほど講義をしましょうか」
「はややー、奏どきどきなのですよー」
「奏ちゃんには私が直々に……ね?」
「はい、紫苑おねえさま」
食事が終わると、食堂で紫苑さんが持ってきたナイトウェアの品評会が始まった。
「あら、可愛らしい下着ばっかりねー」
と寮母さんが覗きに来たが、紫苑がお礼にと差し出した高級下着をもらうと
「あら~、あなた気が利くわねぇ。いい奥さんになるわよぉ」
とにっこにこになって帰って行った。
「瑞穂ちゃんはこんなの似合うかな?」
ファッションにはちょっとうるさいまりやが瑞穂にあてがったのは、レースの黒いランジェリーだった。
シースルーのブラジャーとショーツ、そしてガーターベルトがセットになっている。
「あら、ガウンを羽織るのも素敵ですわ」
紫苑が提案をした。
「でもねー、瑞穂ちゃんはこういう股割れの即物的なのがいいんじゃない?」
「うわー、悩殺パンティーですね」
由佳里ちゃんが顔を赤くしながら瑞穂ちゃんの方を向いた。
「奏ちゃんには、こういうシンプルなランジェリーが似合うわね」
コットンの薄地のキャミソールとショーツ。コットンの平織りは伸縮性に欠けるのでくしゅくしゅとした感じになって萌え萌えな感じになっている。
「由佳里はおばさんぱんつでおっけー」
「え~、まりやお姉さまこそ、おへそが出ない深履きぱんつですよねっ!」
「お、由佳里も言うようになったね?」
「ええ、毎晩まりやお姉さまに鍛えられましたからね」
「ふふふ、今夜もひいひい言わせちゃうからね」
「えええ、もう怪談話は勘弁してくださいっ」
そういいつつ、二人ともチェック柄のおそろいのランジェリーを選んでいた。
ペアルックですか。はいはい。あついあつい。そう思って瑞穂は二人を眺めていた。
「そういえば紫苑さんはどんなランジェリーですか?」
瑞穂はいろいろとランジェリーを出してはみんなにあてがっていた紫苑に尋ねた。
「私は補整下着みたいになっちゃうので、コルセットかしら」
「あ、ゴスロリの娘がきているような感じですか」
「ええ、瑞穂さん用にも用意しましたから着こなしてみますか」
「うれしいですね、よろしくお願いしますね」
「ところで、こちらの袋はなんですか?」
「これは、夜伽の練習用の道具が入っているの、女の子同士で練習する為のものよ」
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「みーずほちゃんっ! 早く着替えないと楽しい時間がへっちゃうわよー」
もみっ。もみっ。もみもみもみもみもみもみ…………
そう声を掛けてきた親戚であり幼なじみでもある御門まりやは瑞穂の後ろから、瑞穂のDカップはあろうかという双丘を揉みし抱き始めた。
最初はブラの上から。そして興の乗った途中からはブラの横から手を突っ込んで。
「きゃっ! まりやったら。あんっ、やめてっ。ちょっと、変なことしないで!」
さらに勢いづいたまりやの指は瑞穂の生の乳頭を弄んでいた。
「うふふ、こーんなにかたくしちゃってあたしのテクニックで感じちゃった?」
「感じませんっ! 単なる刺激への単純反応ですっ!」
「ホント~? 実は濡れちゃってるとか」
「そんなことありません! 触って確認してもいいんですよ?」
「ホントにいいのぉ?」
にやにやするまりや。以前女の子同士なのにもかかわらず、じっとりと弄ばれた事を思い出してふるふると断った。
「いえ、やっぱり遠慮します……」
するするっと近づいてきた紫苑も指をにぎにぎとしている。
「みーずーほーさんー、私にもさせてくださいな」
「まりやっ!紫苑さんっ!着替え着替え!」
瑞穂は泣きそうになりながら訴えた。
「ちぇー、また後で堪能させてもらうかー」
「うふふ」
二人は、残念そうに瑞穂の胸から手を引いた。
「だいたい、まりやもCカップで紫苑さんに至ってはFカップでしょう?私の胸で遊ばなくても自分の胸で堪能してくださいっ!」
どうして、この二人は(実は二人には限らないのだが)人の胸を揉みしだこうとするのか瑞穂は感覚的にも理性的にもさっぱり理解できなかった。
「サイズだけじゃなくって、瑞穂ちゃんの形のいいこの胸がいいんじゃない。乳首の色も綺麗で形もかわいらしいしね」
どくん。
またしても違和感だ。
「瑞穂……さん?」
「え?」
「体調悪いの?大丈夫かしら?見学にする?」
「あ、いえちょっと考え事で」
「生理は2週間くらい前だったもんね、それに瑞穂ちゃんは軽い方だからタンポン使えば平気だしねえ」
まりやが茶化す。
「どうしてまりやが私の生理日を知ってるのよ!」
「瑞穂ちゃん、自分の部屋のカレンダーに赤丸つけてるでしょ?判らないとでも思った?」
「あっ……」
瑞穂は真っ赤になって黙ってしまった。
「女同士ではありませんか、そう恥ずかしがらなくてもよろしいのでは?」
「なんなら、私たちの生理日教えようか?」
「いえ、謹んでお断りいたします……」
女子校に在籍するもの特有の無神経さが共学校から転校してきた瑞穂には気になった。
だが、これは瑞穂の数日前から感じていた違和感ではない。
瑞穂はバスタオル地のスカートをはくとショーツを脱いでスクール水着をはいた、そしてそのまま器用にスカートを首の所まで持ち上げてポンチョスタイルにするとブラをとり、水着の紐を肩に掛けて着替えを終えた。
「いつ見ても、そのテクニックには感心しちゃうわねえ」
ショーツを脱いで下半身すっぽんぽんになって着替えているまりやと紫苑は、瑞穂の技を堪能した。
「まりやも紫苑さんも羞恥心を持って下さいね」
「うちは女子校なんだよ?誰が気にするの?温泉に行ったらみんな裸じゃん」
まりやはにしゃにしゃわらいながら下半身に水着を着けた状態でブラをばらっと取っ払った。陸上部で鍛えた上半身には瑞穂より小振りであるが形のいい乳房がぷるんとふるえていた。
「だからと言って、お風呂でも他の人に背を向けて四つんばいみたいな格好になって具を見せる事はやめてよね」
ワンピース水着なので肩紐に両腕をとおして、ワインのコルク抜きのように両手をよっとあげて胸のところまで水着を引き上げた。
紫苑も同じようなやり方で着替えると、シャワーと消毒槽を通ってプールサイドに出た。
「はい、遅れてきた人早く並びなさい」
競泳用水着を着た女性体育教師は瑞穂たち三人に声をかけると準備運動の号令を始めた。
恵泉女学院の水着はクラス毎に色が違う。A組は白、B組は黄色という明るい色だ。一年生の臨海学校の時にクラス毎の人数把握が簡単にできるようにという事で考案されたシステムだが、薄手の色の水着は透けやすいので女子校育ちでない瑞穂にとって、この白色は結構きつい色でもあった。
チガウ。ナニカガチガウ。
瑞穂の心の奥でチクチクと引っかかるモノがあった。
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夏休みまであと少しという七月も半ば。
お嬢様学校にもかかわらず、質実剛健な淑女を育てるという名目でクーラーの導入が行われていない恵泉女学院の教室では、連日の記録的な猛暑でうだるような暑さから、大半の学院生はぐったりしていた。
さらに一部の学院生にとっては苦行の時間である数学の授業だ。居眠りをしないようにがんばっている娘がそこかしこにいた。そしてやっと三時間目の数学の授業が終わろうとしていた。
「どうかなさいまして?瑞穂さん。授業中ずっと怪訝そうな顔をなさってらっしゃるようですが」
一日中しかめっ面をしたりもそもそとしていた瑞穂を見て紫苑が声を掛けてきた。
「あ、紫苑さん。心配かけてごめんなさい。ここ数日ずっと違和感を感じているの」
「違和感?まあ、何ですの?」
「何かが違う気がするのですが、でもそれが何かが判らないのです」
その違和感は、ずっと瑞穂の頭の中から離れる事はなかった。
「それにしても、暑いですわね。長袖しかない恵泉の制服が少し恨めしくなりますわ」
そういいながら、紫苑はばさばさとスカートをあおった。
「そうですね。今年の暑さは尋常ではありませんものね」
「殿方がいらっしゃらないと、こんな風にはしたなくなってしまいますわね」
「まあっ、昨年のエルダーともあろうお方が。うふふっ」
「まあ、そうおっしゃる本年のエルダーたる瑞穂さんも」
瑞穂もそう言いながらばさばさとスカートの膝の部分をつまんでばたばたとさせてスカート内に籠もった熱気を追い払おうと努力した。
「お姉さま、紫苑様?ミニスカートという選択もありますでしょうに」
瑞穂の前の席の学院生が声を掛けてきた。
「私たちのような大柄な女にはかわいらしいミニは似合わないのですよ」
そういって紫苑は少しだけ沈んだ顔をした。日頃から大柄であると言う事を気にしているので級友は紫苑にそれ以上声を掛ける事をあきらめた。
「で、お姉さまの方は?」
瑞穂は自分の身体についてコンプレックスを抱いているという話はしていなかったので、級友の標的になった。
「理由は忘れてしまったのですけれど、ミニやミディ丈は避けるべき。と決めたんです。ええ、理由は今となっては思い出せないんですけどね」
「お姉さま? それはずるいですよぉ~」
文句が並べ立てられ瑞穂は苦笑した。
「あ。次は水泳の授業ですわね。紫苑さん、みなさんも更衣室へ参りましょう」
「ええ、ほんに朝から暑いので今日の水泳の授業は楽しみですの」
二人は淑女にあるまじきはしたない行動をちょっぴりだけ恥じらいながら水着バッグをロッカーから取り出し、プールサイドの更衣室へ急いだ。
体育の授業は瑞穂・紫苑の居る三年A組とまりやの居るB組の合同授業である。教室の位置がプールから少しだけ遠いB組はまだ全員が更衣室に入りきっておらず、まりやの姿も見えなかった。
瑞穂が制服のジャンパースカート(といっていいのか微妙なのであるが)とブラウスを脱ぐと、アクアブルーの涼しげなブラジャーとショーツが姿を現した。
「今日はストッキングははいてらっしゃらないのですね」
紫苑が笑って尋ねた。
「着替えの中にガーターとストッキングがありますから」
「まあ、ガーターストッキングとは淫靡ですわね。うふふ」
紫苑はにぱーっと笑いながら瑞穂に言った。
「どちらかというと蒸れない為ですわ」
ちょっと、紫苑に反論してみた。
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ぐるっと町内を回って、折り返し地点の公園で、ちょっとだけ一休み。
「お……お義姉ちゃん、速いねっ」
私は毎日はぁはぁしながらお義姉ちゃんについていくのがやっと。お兄ちゃんたちと駆け回っていたから足にはちょっと自信があったのに、やっぱり大人の人には敵わないのかなあ。
「うふふ、由佳里ちゃん知らなかったっけ?お義姉ちゃんは、陸上部の選手だったの。今も陸上部の先生やってるのよ?」
「えー、ずるいー」
「由佳里ちゃん、何がずるいの?」
お義姉ちゃんはにこにこ笑いながら、質問してきました、
「だってさー、お義姉ちゃんみたいにとっても女らしくて美人なのに、運動も男の子顔負けなんだもん。わたしみたいなオトコオンナが勝てるのはかけっこくらいだったのに」
「あら、由佳里ちゃんだって女の子らしいわよ?どうして自信が持てないかなあ?」
「だって……」
「ストーップ!。だっては禁止」
「う……うぐぅ。……えっと、わたし女らしい事全然できないんだもん」
「たとえば?」
「お料理とかお菓子作りとか、かわいいものあつめなんかも」
「じゃあ、お義姉さんが教えてあげるから、一緒に覚えましょう」
「ホント!うれしい!でも、わたし女らしくなるのかなあ?」
「良いこと教えてあげるわ。高校は、私が通っていた恵泉女学院に行きなさいな。あそこはお嬢様学校で女らしい人がいっぱい居て、勉強になるわよ」
「えー、そんな所にいったら、恥ずかしいよう」
「大丈夫、あなた以上に元気な女の子も居たのよ。いたずらが大好きで、お菓子に目が無くて。どこか憎めなかったなあ。くすくす」
「へえ、そうなんだー。そんな人とお友達になれたら楽しいかも」
「うん、由佳里ちゃん。恵泉を受験しよっ!お義姉さんの後輩になりなさい」
「わかったー。勉強もがんばらないと……ダメかな。お兄ちゃん勉強教えるの頼りないから」
「あっはっは。一応先生なのにかわいそう。いいわ勉強は私も見てあげるから。ね。後で卒業アルバムも見せてあげるわ。じゃあ帰ろうか」
タッタッタ……帰り道は何となく軽やかに走り抜ける事が出来ました。
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お義姉さま。お義姉ちゃん、お義姉さん。なんて呼べばいいのかな。うふふ。
私、上岡由佳里には長らくお兄ちゃんと弟しか兄弟がいませんでしたが、お兄ちゃんがお嫁さんを貰うことになりました。
なので、私に生まれて初めて女の姉妹が出来るのです。「義理」と頭に付くんだけど、それでもうれしいんだもん。
お義姉さんは私のお兄ちゃんと同じ学校の先生のなのです。
ハンサムでもてもてなお兄ちゃんは「生徒に手を出すなよっ!」とお友達から釘を刺されていた為なのかはわかりませんが、同僚の先生をお嫁に貰いました。
お義姉さんは、女子校で陸上部の顧問をしているというスポーツウーマンだそうです。
おてんばで男の子と一緒に走り回っている由佳里には合ってるよとお兄ちゃんは言うのですが、どきどきです。
「はじめまして、由佳里ちゃん」
「はじめまして。お義姉さん」
わたしはぎこちなく挨拶したのに、お義姉さんはさらっと挨拶してすごいなと思いました。
お義姉さんはとてもきれいな人でした。ボーイッシュな私とは正反対。お人形さんみたいな素敵な人であこがれちゃいます。
わたしも、あんな風になりたいな。そう思いました。
でも、わたしには無理。オトコオンナなんだから。女の子っぽい事してたらオカマになっちゃうよ~。
お義姉さんは、お兄ちゃんが家に居ない時は、わたしに気を遣ってくれます。
「ねえ、由佳里ちゃん?かわいいな髪飾りとかつけてみない?」
「ええ~、いいですぅ。似合わないから~」
「だめよ~。女の子なんだから、一生女の子を楽しまなくちゃ損よ!?」
「だってぇ。自信ないんだもん~」
「大丈夫。パチンととめて、ハイできあがり。うん、かわいいかわいい」
お義姉ちゃんはわたしを女の子としてあつかってくれる初めての人でした。お父さん、お母さんは娘だと扱ってくれてはいますが、男兄弟の中で結構おおざっぱかつぞんざいにあつかわれているみたいで、女の子然とした扱いはあんまりされませんでした。とはいえ、日に焼けてがりがりで男の子っぽい事ばっかりしている私には似合わないんだと、なかなかおしゃれをするまでには行きませんでした。
「由佳里ちゃん、お義姉ちゃんと走らない?」
「うんっ!走る」
お義姉ちゃんは、毎朝私をさそって、ぐるっと町内を町内を回るランニングを日課にしました。
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こなたさんの様な事を叫んでみるのですが、あと2日ほどで輝け全国少年少女欲望の祭典夏がはじまります。
というわけで、むげんれんささまの本に寄稿させていただいた、「紡ぐ想い」のサイドストーリーをお届けします。一部の方お待たせいたしました。由佳里ちゃん主役です。ええ。家名さま、結城さま。
では、お楽しみ下さいませ~。
今年はリアル女装少年を弄って遊べるのでとってもムフフ~なのですよ。
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アントレーをあけるとバケツの中には超巨大ロブスターの天丼があった。これを天丼と呼んでいいのであればだが。
「いただきます」
覚悟を決めて瑞穂が一口天ぷらをかじる。
「あっ。おいしい。おいしいです。貴子さん」
「あ、当たり前ですわ。お姉さまにおかしな物を出すわけありません」
とはいうものの。大きすぎるロブスターは大味になっており、基準点以上ではあるが最高点になるかどうか。微妙だった。
「はい、結果は後ほど。生徒会チームは参加者席でお待ち下さい、さて二番目のチームはどうぞー」
紫苑が促した。
次のチャレンジャーの天丼が登場した。
天丼……人間が食べられる物をそう称するのは瑞穂も知っているが、これは何という物だろう。
そこにあったのは黒い消し炭のようなカリカリに焦げ上がった天ぷらのようなものと濃厚なあんかけのような汁のかかった生米と見まごうばかりの固いご飯の組み合わせ。
「うう、私死んじゃうのかな」
そう言いながら一口ほおばった。
ガリッ。歯に何か嫌な音が響いた。
消し炭状態の衣であった。ハードビスケットの様な歯ごたえと、炭化した素材の苦い味が口いっぱいに広がった。焼き肉の焼きすぎた肉が炭になったような風合いだ。
「美味しいですよねっ! お姉さまっ! 」
期待に目を潤ませる少女には悪いが、美味しくはなかった。だが瑞穂は無理して飲み込んだ。
「ええ、美味しいわ」
さすがはエルダー。涙目になりながらも気丈に褒めた。
「さて、三組目、どうぞ! 」
何かすごく嫌なにおいがする。これは危険だ。そう瑞穂が思った通り、次の班の料理は、この手の料理対決ではおなじみの重曹百パーセントの衣を使った、苦くてえぐくて、極めつけにまずくて体調をおかしくする怪しい料理だった。
「紫苑さぁん、食べないとダメですか? 」
「ええ、ダメです。女の子の想いがこもっている料理を無下には出来ませんよね」
どこかの腹黒メイドさんのようなセリフが帰ってきた。
「×◇▽#$&♪∞~」
「瑞穂っち。ここにはエチケットバケツは無いからね。飲み下しなさい」
圭が悪魔の様な事をさらりと言った。
美味しい物も中にはあったが、大半は重曹たっぷり、にがりたっぷりの物であった。
「し、紫苑さん、お腹が痛いので……保健室に……」
「あら? 瑞穂さん、お顔が真っ青ですわ。でもその前に優勝者を決めてから倒れて下さいね」
***
「ああっ! お姉さまの初めてゲットよぉおお! 」
少女は感涙にむせいでいた。
こうして、恵泉女学院の裏歴史に燦然と名を残した、お姉さまの初めて争奪戦は幕を閉じた。
「お姉さま……いいのですか? 昨晩、私と一緒に調理の練習をしちゃった事を言わなくても? 」
保健室で寝込んでいる瑞穂に、話を聞いて駆けつけた由佳里がした耳打ちに、瑞穂はただただ引きつり笑いをするしかなかった。
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「まりやさんからの言いつけでちゃんと、瑞穂っちの料理を試食する栄誉を与えられる人を選ぶ事をするように言われているので安心なさい……」
「ええ、そうですわ。野放図にしておくと秩序が保てません。ということで瑞穂さんは正規の班の人数分と試食の栄光を勝ち取った一人用のあわせて五人分を調理していただくこととしましょう。瑞穂さんの手料理をいただきたい方は勝ち抜き戦に挑戦していただくということになります」
紫苑が恐ろしいほどてきぱきと段取りを決めていく。すでにこうなることは予想済み。なのであらかじめ段取りを決めていたようだ。
「『輝け! 第十万飛んで一回、チキチキ愛のエプロン~瑞穂さん手料理争奪戦』を開始します、競技内容は作り方レシピを見ずに記憶だけで料理を作るという、チキチキ愛のエプロンサバイバルデスマッチ方式とします」紫苑は司会を務める羽目になっていた。日頃トンチキなセリフを言わないだけに、その違和感たるや筆舌に尽くしがたい。
そして、調理実習室は即席キッチンスタジアムに変身していた。恐ろしい事に調味料はボウルや小瓶、計量カップに入れられているが、名前は書かれていない。また、いざと言う時の為に消火器が用意された。以前蒸篭を直接火に掛けてしまった少女が居たため、予防策として用意されたものである。貴子は消火器を使わないことを願った。
まずは、海老の天ぷらを使った天丼が競技対象になった。
大きい物は伊勢エビや全長二メートルはありそうな超巨大オマール海老やロブスター、小さい物は桜海老まで揃っている。
大半の者はお嬢様とは言え庶民の出なので正しく車エビやブラックタイガーなどの一般的な天ぷら素材を選んでいく。たまに桜エビや甘エビなどでかき揚げをねらう者も居る。
「会長!これなんか大きくて食べ応えがありますわ」君枝がそう言って差し出したのは身の丈二メートルの超巨大メインロブスター。アメリカはメイン州の空港で、大男がロブスターのはさみをバンザイしてるように広げてにっこりとしたポスターを見かけるがそれに出てきているような大物だ。
「ええ、コレにしましょう。君枝さん」
小麦粉、卵、重曹、水、これが衣の原料。貴子と君枝、葉子、可奈子の四人はロブスターの殻を力任せに剥くと、衣を作り始めた。
お菓子作りで鍛えているだけあって、粉の混ぜ方は絶品だった。しかし、具が大きいというどこかの宣伝並、いな大盛りの美学とか言う番組で紹介しても良いような具の大きさの天ぷらになっていった。
「会長、ちょっと天ぷらが大きい気がしますけど、どうしましょう? 」
可奈子は、君枝の疑問に答えて、とんでもないものを皆の前に出してきた。
「バケツ? 」
「ええ、『バケツでごはん』ということわざもありますし~、インパクトでぇ、勝負しましょぅ」
こうして、貴子チームは誰が完食できるのかというような代物を作り上げた。
一方、そこかしこで重曹と小麦粉を間違える者が続出した。そもそも、無表示の粉袋、さらにほとんど同じ目方にして置いているのが、危険を誘発しているのであるが、まさにお約束と言うくらい重曹に卵をまぜるという調理をしていく少女達。
「瑞穂さん、保健室へ行って胃薬をいただいてきた方がよろしいかもしれませんわね」
「紫苑さぁん、またそんな他人事みたいなぁ」
「ふふ、これもエルダーの努め。あきらめましょうね」
「紫苑さんのいけずぅううう」
一子ちゃんみたいな事を言って拗ねる瑞穂であった。
「では、完成したところで、エルダーの瑞穂さんにご試食をしていただきましょう。評価の高かった方が、瑞穂さんの愛の手料理をゲットできるのです」
紫苑は、ノリノリだ。
「お姉さま~、わたくしたちの愛のメニューを~」
「いいえ~わたしたちの方が愛がこもってますわ~♪」
「「わたしの方こそ愛が~♪」」
「ちょ、ちょっと待ってください。どうしてみなさんミュージカルみたいに歌っているんですかっ!」
「「それは~、あ~い~ゆ~え~に~♪」」
「ううぅ、何がなんだか、わかわかんないよう」
「では、僭越ながら私が口移しで最初の一口を」
パコーンッ!
どこからとも無くハリセンが、うかつなことを口走った少女をぶちのめした。
結局、試食の順番はくじ引きとなった。
「あ、貴子さん」
一番くじは、生徒会組。
「わ、私はお、お姉さまに不埒な物を食べさせようとする不逞の方々からお姉さまを守……」
「ストップ。貴子さん。貴子さんのお心遣い判っていますよ」
そう言うと瑞穂は貴子達の作った料理をアントレーから……はみ出していたそれを見て絶句した。
「あの、貴子さん? これは何でしょう……」
「おねぇさまぁ、これはぁ。『バケツでごはん』といってぇ、由緒正しい料理ですぅ」
可奈子が舌っ足らずなしゃべり方で解説する。
「あの…私の記憶が確かなら、それは動物園のお話ではなかったかしらぁ? 」
動揺でアクセントがおかしくなっている。
「中身はぁ、まともですぅ。どうぞぉめしあがれぇ」
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家庭科実習室。そこは、通常三十名ほどの生徒しかいない場所である。
今、そこにいるのは数十名どころではなく、百数十名といったところか。
「これは、一体……? 」
瑞穂だけではなく事情をよく判っていない家庭科の先生や、話に乗り遅れた一部の生徒は絶句していた。
「私たちにもお姉さまの初めてをいただきたいのですっ! 」
「へ? それは……何の事ですか……」
瑞穂は、何が何だか判らない状態に混乱しかかっていた。
「お姉さまっ! 」
「何ですの? お姉さまの初めて。と言うのは」
紫苑が助け船を出す。しかし、今のままでは泥の船状態ですよ。瑞穂は思っていた。。
「お姉さまが初めて調理実習をなさると言うことで、その試食をさせていただきたいのです」
「ここにいる全員に食べさせるとなると、一体どれだけの量を作らなくてはならないのかわかりませんわね」
「紫苑さぁん。そんな他人事みたいな……」
「あら、瑞穂さん。私ではなくて瑞穂さんの事ですから当然ですわ」
そう言うと紫苑は、にこやかに微笑んだ。華麗に助け船は轟沈した。
「お、お姉さまっ! 」
生徒会長が騒ぎを聞きつけて登場した。
「貴子……さん」
「こ、これは一体何事ですかっ! 各人ホームルームへ戻りなさい」
そう、威厳を持って警告を発した。
「生徒会長。会長はお姉さまの手料理を食べてみたいとは思われないのですか!?」
「え。お……お姉さまの手料理……。ぴゅ。ぴゅるる。ぴゅるるるるー。ばたっ」
何か愉快な効果音を出しながら、貴子は大量の鼻血を出しながら倒れた。
「か、かいちょおおおおおおお」
貴子の金魚のフン1号の君枝が、倒れている貴子を揺さぶった。
「私としたことが……」
貴子は薄れ行く意識の中。心の中で地団駄を踏んだ。
それをよそ目にクラスメイトは瑞穂誘致合戦を繰り広げている。
オリンピックの誘致合戦並に、いやそれ以上の勢いで瑞穂の気を引こうとしている。
「お姉さま。こちらの班にいらしてください♪」
「いえいえ、私たちの方へ♪」
「あらあら。こちらは、料理の達人が揃っていましてよ♪」
「こちらへ♪」
「こちらへ♪」
だんだん、収拾がつかなくなっていった。
「ふっ。あなたがた……瑞穂っちは私たちが引き受けます……」
ぬうううっと瑞穂の前に下から沸いて出たのは、一目どころか二目も三目も置かれている小鳥遊圭であった。どこから出てきたんだろうと瑞穂がいぶかるよりも前に、すっと脇から出てきたのは、高根美智子と十条紫苑。この三枚ブロックは鉄壁すぎるわっ!くうぅ。と歯ぎしりをした少女が何人いたことか。
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