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処女はお姉さまに恋してる THE MOVIE 第1回

恵泉女学院学校群の中央にそびえ立つ時計台。その最上階にあるのが、この学院でもっとも権限を持つ高校生徒会。
通称薔薇の館。その薔薇の館に君臨する生徒会長が、史上最強生徒会長と呼ばれる厳島貴子その人であった。
軽くウェーブの掛かったやわらかな髪。そして優雅な物腰。権力がありながら、驕ることなく自分を律する孤高の才女。それが貴子の学院内での評価だった。
「君枝さん。確か本日、我が学院に転入生がやってくるのでしたね」
「はい。3年生の宮小路瑞穂嬢です。転入試験は満点。これは我が学院始まって以来の才女と言っても過言ではありません」
三つ編みに少々やぼったい黒フレームのメガネをかけた少女が答える。会計である彼女は貴子の信奉者でもあった。
「この時期に転入。しかも成績は抜群。何か臭うわね。直々にご挨拶差し上げましょう。宮小路瑞穂さん、貴女がどのような方か見極めさせていただきますわ」
そういうと貴子は生徒会長の机の上に置かれたロイヤルコペンハーゲンのティーカップに注がれているディンブラを飲み干し、生徒会専用のエレベータで階下へ降りていった。
君枝は、一人取り残された生徒会室で、自分のティーカップに残っている紅茶を一口すすった。キリッとした爽やかな味わいのディンブラは、貴子の性格にも似ていて君枝も好きな一品であった。
『ゴーン・ゴーン・ゴーン』
重厚な朝の鐘が恵泉の敷地だけでなく、近隣にも鳴り響く。
その時計台の窓からは、恵泉女学院の下に広がる市街地とさらにその先にある海岸線が一望できた。

-乙女はお姉さまに恋してる- THE MOVIE
"La r'evolutionnaire de l'adolescence"

ここは恵泉女学院の正門に通じる道。ショートヘアの少女につれられて、ロングヘアの少女がやってきた
周囲の少女たちが物珍しそうにロングヘアの少女を見ている。
「まりや、なんかじろじろと見られているのだけれど、これは…何?」
ロングヘアの少女がショートヘアの少女に不安げに聞く。
「転入生が珍しいだけだって、気にしていたら負けよ」
「勝ち負けって何よ。あたしは見せ物でも客寄せパンダでもないわ」
ロングヘアの少女は憤っている。
「あ、…ごめん。瑞穂ちゃん、ちょっと黙ってて」
まりやが、ロングヘアの少女を制した。正門の入り口に、仁王立ちし腕組みをして睨め付けるような目で二人を見ている人物がいた。

「御門まりやさん、転校生はこちらの方?」
「ふんっ、そうよ。こちらは宮小路瑞穂さん。で、いったい転入生である彼女に何の用?あんたら生徒会には用はないでしょ」
「ふ。下々の感覚に染まっているあなたには、辟易させられますわ。名門御門の人間でありながら、言葉遣いがなってませんのね」
貴子はまりやを侮蔑した目で一瞥すると瑞穂の方に顔を向け、微笑みながら言った。
「ああ、わたくし、厳島貴子と申します。宮小路さん。転入生は生徒会に来ていただく事になっていますの。さ、参りましょう」
「ちぃっ!また勝手なこと言って!そんなルールなんか聞いたこと無いわ!」
まりやは歯ぎしりしながら反抗した。
「まりや…あたし行く。行かなきゃならない気がするの。」
「結構です、宮小路さん。では貴女はこちらに。ああ。そこの御門さん、貴女はここでお引き取りを」
くるりときびすを返すと貴子はスタスタと歩きだした。
「あ、待ってください。ま…まりや、あとでね」
憤慨したまりやを残して二人は去っていった。
「むきーーーーーっ。瑞穂のばかああああああ!」

「な…なんなの!?この機械仕掛けの学内は!?」
瑞穂が驚くのも無理はない。縦横無尽に張り渡された廊下や建造物は、機械仕掛けで常に動いている。
「あら、御門さんから聞いてらっしゃらないの?あの方はやはりうすらトンカチでいらっしゃるのね。」
貴子は心底呆れたようにつぶやいた。
「この学院は鏑木財団による人材開発を主眼とした研究学園都市なのです。あなたは、世界最高峰の学院に入学したのですよ?」
「はあ。あまりそのような事は知りませんでした。従姉妹のまりや…御門まりやさんに強引に勧められて転入試験を受けてやってきた。だけなのです」
「こちらへ」
貴子は生徒会室へつながる高速エレベータに瑞穂を導いた。
「なんだか、現実味の薄い場所に感じますね」
「わたくしたちには非常にリアルなのですけれどね」
「でも、やはり…映画か小説の世界に思えてなりません」
「言い換えてみましょう。世の中の出来事が現実感に溢れている…とはとても言い難いのではありませんか?新聞やニュースに出てくる事件など、わたくし達にとっては他人事つまり現実感に乏しい出来事として受け取っていますわ。では、貴女がこれから実体験するというわが校は非現実なのでしょうか?」
「何か禅問答の様に聞こえますが、あたしにしてみればどちらも非現実的なのかもしれません」
『チン』エレベータが最上階に到着したことを知らせるベルが鳴った。電子音ではなく本物のベルの音だった。
「ようこそ、宮小路瑞穂さん。恵泉女学院生徒会室、通称薔薇の館へ」
貴子は瑞穂の方に振り返ると大げさなポーズをとりドアの方に手を差し出した。
シャーっという音とともにドアが開くと、そこは薔薇が咲き乱れる空中庭園を持つ豪奢な作りの部屋であった。
「やっぱり、ここも現実感はありませんね。くすっ」
瑞穂はくすりと笑った。
「宮小路さま、お茶でございます」
貴子にすすめられるまま応接セットのソファに腰をかけた瑞穂に、君枝がお茶を出した。客用のティーカップはウェッジウッドだった。貴子のカップよりは質素な感じがするが趣味は悪くない青いカップであった。瑞穂は出されるままに一口すすった。
「まあ、おいしい、茶葉もいいけど淹れ方も上手だわ」
「ありがとうございます」
そう言うと、君枝は自分の席に戻っていった。瑞穂には少し警戒心をもっているような感じだった。
貴子は自分のロイやりコペンハーゲンからディンブラを一口すすって、カップをテーブルの上のソーサーに戻した。
「宮小路瑞穂さん。単刀直入に言います。御門さんと別れて、我々生徒会に参加しませんか?」
「…会長!」
君枝が驚く。
「お黙りなさい!君枝さん」
貴子が叱責する。
「あたしは、生徒会など人の上に立つような仕事は向いていません。それに3年生の今頃転入してきたような生徒にほいほい務まるようなものでも無いのではないですか?」
「転校当日にいきなり、生徒会に参加しろ。と言われてはいそうですかと即答できないのは理解しております。ですから、お返事は後日でかまいません。そろそろショートホームルームの時間です。教室までお送りいたしますわ」
貴子はそう言うと、瑞穂に向かい手を差し出した。
「いえ、大丈夫ですわ」
そういうと瑞穂は一人で立ち上がり、貴子の後に着いていった。一瞬貴子の目が、くっと動くが瑞穂はそれを知ってか知らずか、何も言わなかった。

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