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「ちびまりやちゃん」

「まりやさま。早く起きてください!幼稚園に遅れますよ!」
「むにゅむにゃ。ほっちょいて~」
御門家のまりや専属メイドがなかなか起きないまりやを起こすのに必死だ。
ここは、東京の山手にある御門家の子供部屋。部屋の中は持ち主の性格を現しているようで、着せ替え人形が散らばっている。
「まりやさまっ!」
メイドは覚悟を決めて、まりやのベッドカバーをむしりとった。
ボクッ!
「うぎゃ。」
蛙をつぶしたようなメイドの悲鳴が室内に響き渡る。まりやの足蹴がメイドのおなかに突き刺さった。
「うがぁ!」
蹴飛ばしたほうのまりやはうめき声をあげるが、しっかり掛け布団をだきしめたままである。
怪獣じゃあ、ここに怪獣がおるわい。そう常田富士夫の声で叫びたくなるメイドであった。
気を取り直したメイドはまりやを後ろから抱きかかえるとベッドから引き摺り下ろして、カーペットに無理やり立たせた。
「おはようございます!まりやさま。急がないと幼稚園に遅れますよ!」
メイドの叫びにやっと反応した、まりやはぼそっとつぶやく。
「きょうおやちゅみ」
「まりやさま!」
メイドに怒られしぶしぶ、着替えをすませご飯を食べた。恵泉女学院幼稚園に出かけるのにしっかり1時間かかった。

まりやは幼稚園に出かけるのがあまり好きではなかった。というのも「ちゅくめいのらいびゃる いちゅくしまちゃかこ」が居るからだ。
厳島グループというまりやの親戚の鏑木財閥系グループと猛烈な喧嘩をしている、ある種下品な企業集団の総帥の娘が貴子であった。(と、後年まりやは認識していた)
そもそも、貴子とは最初からそりが合わなかった。あまり家柄とか、お上品さを気にしないお転婆娘なまりやにとって、品行方正、お嬢様然とした貴子はお互いに相容れない存在のようだった。
そもそもの出会いは、幼稚園の入園式の時であった。園長先生のお話が始まったばかりだというのに、まりやはもう式典に飽きてきていた。
「ぷぎゅるるる~」
謎の効果音を口にしながら、まわりの子の様子を観察しだした。
「あにゃた。しじゅかになしゃっていただけましぇんこと?」
頭の両サイドにリボンをつけたふわふわの髪をした子がじろっとまりやをにらむ。
「にゃにおう~」
まりやは怒られるのが大嫌いな子であった。家でもいたずらをして、怒られそうになると、ぴゅーっと逃げてしまい、今やいたずら発覚時の逃げ足は世界2位(追い風参考)というほど。
まりやは貴子にちょっかいを出しまくった。
「いいきゃげんにしてくだしゃい」
貴子は激昂する。
「うるしゃい!」
まりやも負け時と激昂する。
「きーーーーっ!」
「むきーーーーーっ!」
ついに取っ組み合いの喧嘩が始まった。まりやと貴子のファーストコンタクトは、最悪な事態から始まった。
「まあ、二人ともいったい全体どうしたというのですか?」シスター兼保育士の女性職員は目を丸くして二人を見た。
それもそのはず、二人とも砂だらけで恵泉女学院幼稚園のエプロンドレスは所々にかぎざきが出来ている。貴子にいたっては髪飾りのリボンがちぎれてしまっている。
「こにょこが、あばれりゅんでしゅ、ちゃかこはひぎゃいしゃにゃのれしゅ」
「そっちぎゃ、しゃいしょにけんきゃしてきちゃのににゃにいってんにょよ!」
「「うーーーっ」」
「「ふんっ」」

別のある日
「まりやしゃん。しょこをどいていただけにゃいかしりゃ?」
「いや」
まりやが陣取っているのは、トイレの入り口。貴子はすでにもじもじしながらまりやをにらんでいる。
日ごろの恨みを晴らすべく、対峙しているのであるが、陰湿な嫌がらせではなく、堂々と直接対決するところなど、幼児ながら天晴れとしか言いようがない二人であった。(え?知恵が回っていないって?そんなことはないですよ。お姉さま方♪)
「あにゃたは、どおうちてそんにゃにひとにょいやぎゃるこちょばか……う…うぇえええええええん」途中で貴子の文句は止まり、そのかわり涙がぽろぽろと出てきた。我慢の限界を超えたからである。
まりやは当然、大洪水になってしまったその場から韋駄天の如く逃げ出した。
貴子が園内でお漏らしをしてしまった事を他の子に言いふらさない所は、非常に漢気あふれた行動パターンだといえよう。

事あるごとに対立していったこの二人が14年後に親友になるとは、神様もイエス様も気が付かなかったようである。

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恵泉放送部提供「上岡由佳里のお菓子大好き!」

「(ジングル)ごらんの番組はKHC、恵泉放送部がお送りしております」
「みなさん、ご機嫌いかがでしょうか。一週間の御無沙汰でした。上岡由佳里のお菓子大好き!の時間がやってまいりました。本日のゲストはエルダーシスターの宮小路瑞穂お姉さまです」
パチパチパチ
「えっと、宮小路です。よ…ろしくおねがい…しますね」
「瑞穂お姉さま、緊張されてますね。では、今日作るお菓子は最近大ブームになっているフィナンシェをつくります。では材料をフリップに書いていますので、メモのご用意を」
『 牛・豚挽肉 1000グラム
  卵     2個
  玉ねぎ   1個
  パン粉(生) 2カップ
  ナツメグ  少々
  サラダ油  大さじ3
  バター   適量
  塩     適量
  こしょう  適量
  砂糖    適量


「あのー、由佳里ちゃん?お菓子にしては挽肉とか書いてあるような気がするのだけれど…」
「お姉さま、気にしたら負けです!」
「は。はあ」
「じゃあ、まず玉ねぎをみじん切りにして耐熱皿にバターと一緒に盛って3分チンします」
「はい。こうですね」
「次に挽肉に塩、胡椒、ナツメグ、パン粉、お砂糖、先ほどチンした玉ねぎを淹れて良くこねます」
「な…んだか量が…多くてたいへんですわね」
「小判型に整えてぺちぺちと叩いて形を整えます。おへその部分に少しくぼみを入れます」
「ぺちぺちぺち♪」
「できあがったらフライパンに油を引いて良く熱したのち、できあがった材料を入れて良く焼きます」
「はい!。入れました」
「片面を良く焼いて、こんがりと焼き色が付いたらひっくり返して、蒸し焼きにします。はいっ!お姉さまひっくり返して!」
「はいっ!先生!」
「蓋をしてじゅうーっという音が小さくなったらできあがり」
「はあ、はあ、はあ、重労働ですねえ。ところで由佳里先生?これハンバーグじゃないんですか?」
「いいえ、違います!これはフィナンシェというお菓子で、フランスの金融街にあるお菓子屋さんが考案した金塊に似せたケーキなのです!」
「えーーーと、投げっぱなし?」

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処女はお姉さまに恋してる THE MOVIE 第2回

貴子は職員室を出たばかりの、瑞穂の担任教師を捕まえ、瑞穂の身柄を引き渡した。
「あなたが、転入生の宮小路瑞穂さんね。職員室で待っていたのだけれど、厳島さんに掴まっていたのね。うふふ。自己紹介が遅れちゃったわね。わたし、梶浦緋紗子。緋紗子先生って呼んでくださる?」梶浦緋紗子、25歳の若い女教師だが、背丈も大きい割にどこかあどけなさを残すアンバランスさ漂う。
「緋紗子…先生ですか。はい。よろしくお願いします。か…宮小路瑞穂です」
「うーん、あなた大騒ぎになるかもしれないから、覚悟しておいてね」
「覚悟…ですか?一体何を?」
瑞穂は尋ねた。
「うふふ、よく見るとあなた美人ね」
瑞穂は気がつかなかったが緋紗子は淫靡なまなざしで瑞穂を睨め付ける。女郎蜘蛛が獲物を見つけた時のような目だ。チロッと舌なめずりもしていた。
「え。そうですか…」
瑞穂は下を向いてどぎまぎする。
「下を向いてると、ぶつかっちゃうよ。ちゃーんと前を向きましょうね」
そんな話をしている間に二人は3年A組の教室までやってきた。
「はいはい、みんな静かに!転校生を紹介しま~す。はい、お名前をどうぞ」
緋紗子が瑞穂を紹介しだす。少々子供っぽい言い方をしているうえに、大きめなメガネがさらに子供っぽい感じを醸し出す。その雰囲気で生徒に人気があるようだ。
「はい。あたしは、か…宮小路瑞穂と申します。えーと、お嬢様言葉は慣れていませんので、言葉遣いがおかしい事も多々あると思いますが、よろしくお願いします」
教室内は静まりきっていた。何か大失敗したのかと瑞穂は、どぎまぎした。
「きゃあーっ。かっこいい~」
「王子さまみたい~」
「お姫様の方が似合ってるわよ~」
教室内はかみすばしいことこの上ない状態になっていた。
パンパン!緋紗子先生が手を叩いた。
「はい。みんな静かに~。幼稚舎じゃないんだから、落ち着きなさい」
「え~、先生~、こんな美人がうちのクラスになるんですもの~、これが落ち着いて居られますかって感じですわ」
「そうですよ~。朝なんかいきなり生徒会長と一緒に薔薇の館へ行ってしまわれるんですもの。ああ、素敵」
「えええ。そうすると、転入早々天上人?」
「はいはい。ホームルームが始められないわよ~、お願い。静かにして頂戴~」
緋紗子は大声で懇願し、なんとかその場は収まった。
「先生、すみません」
瑞穂はつい謝る。
「ふう。やっぱりこうなったわね。授業にならないわね。お嬢様学校と言ってもこれじゃあねえ」
緋紗子は苦笑した。有閑階層はゴシップが大好きという事を緋紗子は忘れているようだ。
「まあ、瑞穂さんにレクチャーも兼ねて説明しておきましょうね。たぶんクラスのみんなも貴女のこと知りたがっていると思うから」
「はあ、すみません」
瑞穂は謝ってばかりいた。
「えっと宮小路瑞穂さんは、開正学園から転校してきました。」
「おおーっ」
どよめきがおこる。開正といえば、ここ恵泉女学院のエリートコースに匹敵する才能が集まるところとして有名なのだ。
「みなさんも聞き及んでいると思いますが、転入試験は全教科満点。ということで基本的にはこのクラスに所属しますが、授業は特進コースになるので半分以上に授業は別々になってしまうわね」
「ええーっ、そんなー」
別のどよめきがおこる。
「えっと、みんなが天上人と言っているのは何ですか?」
「天上人は、生徒会の事よ。学院長直轄の活動団体になっているので、私たち教職員よりも権力があって、学園自治をまかされているの。とはいえ、無茶な暴政はしないし、愛校心がある生徒が多いので、学校的には大歓迎なのよ」

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おとボク 迷作劇場『とりかへばやものがたり異聞』

今は昔。それはもうはるか昔。京の都にえらーい左大臣がいました。左大臣は今で言うと総理大臣くらい偉いわけです。
「姫、姫は居らぬのか!?まったくどこをほっつき歩いておるのじゃ、帝が入内を御所望だというのに。こうもお転婆では困ってしまうのう。おお女房。なに!?また瑞穂が失神して倒れただとう!?いったいあの兄妹はどうなっておるのじゃ!」
最高権力についた左大臣のたった一つの悩みの種が、このお世継ぎたちの体たらく。嫡男はそれはもうたおやかで、都一番の美人の誉れが高い可愛らしい瑞穂君(きみ)。そして御息女はやんちゃで手の付けられないいたずらっ子で暴れん坊のまりや姫。
「あーあ、二人の性別がとりかえられたらなあ。」というのが「とりかへばや ものがたり(とりかえたい 物語)」なのであります。

さて、ここは宮廷ど真ん中。
「左大臣、そろそろ貴殿の娘を入内し、女房(女官)にしてはもらえないだろうか」
帝である貴子君が、左大臣に詰め寄ります。左大臣、まさかお転婆娘の方を仕官させるわけにもいかないだろうなあ。と考えてみるのですが、瑞穂君のほうとて、何かあるとすぐに「きゅう~」と倒れ込んでしまうわけで、それもこまってしまってこんな言い逃れをかんがえました。
「帝。本当は出仕させたいのでありますが、なにぶん娘はとてもシャイなので、男性をみただけでのぼせ上がってしまうのです。というわけで、無理」
このいいわけ、かなり無茶です。
「じゃあ、えらく美男子だという息子でもいいや、仕官させてくれないか」
貴子君がご所望になるが、これまた困った左大臣
「息子はもう、暴れん坊で、主上の御身になにかあったらわたし、首くくってお詫び申し上げないといけなくなりそうです」
と、ごまかすも、
「だーめ。確か、同じくらいの年の紫苑中将がいたはずだから、彼と一緒に仕官させなさいね。させないと首くくってもらうよ」
とやけに凄んでくるので、あきらめて
「はい。善処します」
と答えてしまったのです。

「おはよう!まりや君、今日も良い日だね」
紫苑中将は、まりや姫を気に入ったらしく、何かあるたびに一緒に遊んだり、出かけたりする仲になっていきました。
そうこうするうちに、なんと瑞穂君を出仕させないと、左大臣の首がやっぱり危ういところまできてしまったので、ついにあきらめて、瑞穂君を女房として仕官させることになりました。
「おお、なんと美しい妹君だ。まりや君、あなたがうらやましいよ」
そういうと紫苑中将は瑞穂君を一目見ようとあの手この手で、女房の寝所を目指します。
実は貴子君も瑞穂君には会いたくて会いたくてどうしようもない。いやー、若さって本当にいいもんですよね。
ついに、貴子君は瑞穂君の寝所にもぐりこんでしまったのです。大あわてなのは瑞穂君。そりゃー、ごちそうさまーっていただかれちゃったら、一族郎党まるっと島流しどころじゃない。すっかり絶滅させられるって感じになりますからね。
「まあ、主上わたくし、心に決めた方がいらっしゃいますの。ですからよよよ。ばたん」
お着きの女官がいるところでナイスタイミングで倒れてしまいました。帝とはいえ、御無体なことはできないので、しょんぼりorzと帰って行きました。

まりや姫の方はと言うと紫苑中将がもうちょっかいかけまくり。
「なあ、まりや君、君に女を紹介しよう。東の四の姫。奏姫だ」
ついに奏姫とまりや姫は結婚ということに。とはいえまだまだロリっ娘な奏姫。かまととどころか本当におこちゃま、結婚生活はおままごとなわけなので、子供もできるわけない。というか女同士で子供が出来たら、かたつむりか何かなので、それはそれでやだなあ。
「あのですね。奏ね。まりやさまの事大好きなの~」
あまりのかわいさの為、ぎゅーと抱きしめるだけではあきたらず、紫苑中将なんと親友のまりや君の妻に手を出して孕ませちゃった。

こりゃーやばいと思った左大臣。なんとか息子と娘をいれかえようと画策するのだが、なんとまあ、貴子君が瑞穂姫に手を出してしまった。
あろう事か、瑞穂姫つわりになってしまい、すわおめでたか!となった。

さて、こんなどたばた生活が平安時代におこなわれていたのです。

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マジかルしスター 緋紗子

わたしね、梶浦緋紗子26歳。世間的にはお肌の曲がり角をヘアピンカーブで急旋回してしまったお年頃。はあ。職業。目下の所OGでもある恵泉女学院の古文教師。
でもね、それは、世をしのぶ仮の姿。お供の魔法猫「しお」とともに、この世のモノではないモノたちと戦う魔法少女。それが、緋紗子なの。
マジかルしスター 緋紗子におまかせよ!
「にゃあ!?」(緋紗子お姉さま、私、こんな役なの!?)

序章 マジかルしスター 爆誕 怪人ばぐーん登場。

恵泉女学院、それは緋紗子にとって、甘く切なくそして苦い想い出を秘めた場所なの。恋人であった詩織(しお)が亡くなったのもこの学院内のことだったしね。
新聞では事故死と書かれていたが、転校先から元クラスメイトに問い合わせると、事故ではなくありえない事件だという噂だったわ。
後ろ髪を引かれる思いで転校してしまった私は、教員としてこの地に戻ってきたのだ。
「うーん、今日からぁ、緋紗子も先生なんだからぁ、甘えんぼさんからは卒業するぞぉー!」
ちいさくえいえいおーと、気勢をあげてみる。けどコロコロとした鈴の音のような声じゃやっぱりダメね。
童顔な緋紗子は、メガネをかけると小学生みたいな風貌になるの。背丈が168cmあるからまだ大人にみえるけど140cmくらいだと子供先生にしか見えないかもお。
こども先生はかわいいかもしれないけど、自分がなるのはちょっといやかも。
「さあ、出かけますかっ!」
緋紗子は、自転車によっこらしょとまたがると、颯爽と学校を目指してこぎ出した。うふふ、職業婦人って感じに見えるかなあ。
学校に近づくけど、まだ登校時間じゃないので人もまばら。
キキーーーーッ!
「あっ、あぶない!猫ちゃん。ダメじゃない。気をつけなさいね」
急に白い猫が飛び出してきたので、緋紗子は急ブレーキをかけたの。猫は緋紗子をチラッと見るとにゃーと鳴いて塀にのぼって消えていったんだ。

「みなさん、はじめまして。梶浦緋紗子といいます。緋紗子先生って呼んでね。呼んでくれないと泣いちゃうからね」
一年ひよこ組の教室はざわざわしていた。
「ふっふふ、良く来ましたね、新入りさん。ここはわがばぐーん帝国の配下にあるのだ。ばぐーん」
え?だれ?緋紗子こまっちゃうよ。えっと、えっと出席簿出席簿。んーと上岡由佳里さんね。
「上岡さん。おいたはダメですよ。メッ」
緋紗子は一生懸命威張って言ってみたけど、上岡さんは全然きにしていないよ。どうしよう。
「ばぐーんの戦闘員達よ。この女を捕まえて洗脳しておしまい!ばぐーん!」
「あらほらさっさー」
ノリの良い人たちが緋紗子を捕まえにきたよう。

「そこまでにゃ。妖魔ばぐーん!」
教室の上の方から声がしたよ。びっくり白い猫さんだ。しゃ、しゃべってるう?
「緋紗子ちゃん、君はマジかルしスターなんだ。このステッキを使って変身して戦うんだ!」
「ほえ?これどうするの?」
緋紗子は白い猫さんが投げたステッキをうけとった。
「マジかるドミかる、マジかルしスター 緋紗子に変身よ!」
きらきらきらーーーーんと光が緋紗子を包んだ。うわーかっこいいー!
「あれ、なんか上岡さんがおっきくなってる」
「ばかめー、おまえが小さくなっておるのだああああ、ばぐーん!」
「ええええ、そんなー」
「大丈夫、呪文で戦うんだ!戦う意志があれば呪文は自然に、心にわいてくるんだ!」
「フローラル、スィート、ぽらほらマジカル! マジかルしスター 緋紗子が主になりかわり天罰を下しますわよ!」
「ば、ばぐーーーーーん!」
ちゅどーん!よくわからないけど急に舞台が石切場になって爆発しちゃった。

「よくやったね、緋紗子お姉さま!」
「あなただれ?」
「わたしよ。しおですよ。詩織」
「うそ!なんで」
「いやね、先輩のお誕生日記念に引っ張り出されてえらい目にあってるんですよ」
「ちょっとちょっと、素に戻らないで。26にもなってこんな恥ずかしい格好してるのよ、わたしだってやなのよ!」
「大丈夫じゃないですか?今日び有明でやってる全国青少年少女欲望の祭典では40越してるのに魔法少女やってる人とかいっぱい居ますから。しかも男」
「しお、あなたむやみに敵を作らないでよね」
「はあ、とりあえず、お誕生日おめでとうございます。お姉さま」
「あ。あのう。妖魔ばぐーんって何ですか。一部の人だけ大喜びですよ。これじゃ」

「緋紗子お姉さま、なんか次はまりやさんって娘さんが敵らしいですけど、いいんですかね?」
「うーん、まさかその次が貴子さんでラスボスが瑞穂さんなんてありきたりな話じゃないですよね。」
『ぎくっ』
「「「なんか、へんな声しなかった?」」」

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処女はお姉さまに恋してる THE MOVIE 第1回

恵泉女学院学校群の中央にそびえ立つ時計台。その最上階にあるのが、この学院でもっとも権限を持つ高校生徒会。
通称薔薇の館。その薔薇の館に君臨する生徒会長が、史上最強生徒会長と呼ばれる厳島貴子その人であった。
軽くウェーブの掛かったやわらかな髪。そして優雅な物腰。権力がありながら、驕ることなく自分を律する孤高の才女。それが貴子の学院内での評価だった。
「君枝さん。確か本日、我が学院に転入生がやってくるのでしたね」
「はい。3年生の宮小路瑞穂嬢です。転入試験は満点。これは我が学院始まって以来の才女と言っても過言ではありません」
三つ編みに少々やぼったい黒フレームのメガネをかけた少女が答える。会計である彼女は貴子の信奉者でもあった。
「この時期に転入。しかも成績は抜群。何か臭うわね。直々にご挨拶差し上げましょう。宮小路瑞穂さん、貴女がどのような方か見極めさせていただきますわ」
そういうと貴子は生徒会長の机の上に置かれたロイヤルコペンハーゲンのティーカップに注がれているディンブラを飲み干し、生徒会専用のエレベータで階下へ降りていった。
君枝は、一人取り残された生徒会室で、自分のティーカップに残っている紅茶を一口すすった。キリッとした爽やかな味わいのディンブラは、貴子の性格にも似ていて君枝も好きな一品であった。
『ゴーン・ゴーン・ゴーン』
重厚な朝の鐘が恵泉の敷地だけでなく、近隣にも鳴り響く。
その時計台の窓からは、恵泉女学院の下に広がる市街地とさらにその先にある海岸線が一望できた。

-乙女はお姉さまに恋してる- THE MOVIE
"La r'evolutionnaire de l'adolescence"

ここは恵泉女学院の正門に通じる道。ショートヘアの少女につれられて、ロングヘアの少女がやってきた
周囲の少女たちが物珍しそうにロングヘアの少女を見ている。
「まりや、なんかじろじろと見られているのだけれど、これは…何?」
ロングヘアの少女がショートヘアの少女に不安げに聞く。
「転入生が珍しいだけだって、気にしていたら負けよ」
「勝ち負けって何よ。あたしは見せ物でも客寄せパンダでもないわ」
ロングヘアの少女は憤っている。
「あ、…ごめん。瑞穂ちゃん、ちょっと黙ってて」
まりやが、ロングヘアの少女を制した。正門の入り口に、仁王立ちし腕組みをして睨め付けるような目で二人を見ている人物がいた。

「御門まりやさん、転校生はこちらの方?」
「ふんっ、そうよ。こちらは宮小路瑞穂さん。で、いったい転入生である彼女に何の用?あんたら生徒会には用はないでしょ」
「ふ。下々の感覚に染まっているあなたには、辟易させられますわ。名門御門の人間でありながら、言葉遣いがなってませんのね」
貴子はまりやを侮蔑した目で一瞥すると瑞穂の方に顔を向け、微笑みながら言った。
「ああ、わたくし、厳島貴子と申します。宮小路さん。転入生は生徒会に来ていただく事になっていますの。さ、参りましょう」
「ちぃっ!また勝手なこと言って!そんなルールなんか聞いたこと無いわ!」
まりやは歯ぎしりしながら反抗した。
「まりや…あたし行く。行かなきゃならない気がするの。」
「結構です、宮小路さん。では貴女はこちらに。ああ。そこの御門さん、貴女はここでお引き取りを」
くるりときびすを返すと貴子はスタスタと歩きだした。
「あ、待ってください。ま…まりや、あとでね」
憤慨したまりやを残して二人は去っていった。
「むきーーーーーっ。瑞穂のばかああああああ!」

「な…なんなの!?この機械仕掛けの学内は!?」
瑞穂が驚くのも無理はない。縦横無尽に張り渡された廊下や建造物は、機械仕掛けで常に動いている。
「あら、御門さんから聞いてらっしゃらないの?あの方はやはりうすらトンカチでいらっしゃるのね。」
貴子は心底呆れたようにつぶやいた。
「この学院は鏑木財団による人材開発を主眼とした研究学園都市なのです。あなたは、世界最高峰の学院に入学したのですよ?」
「はあ。あまりそのような事は知りませんでした。従姉妹のまりや…御門まりやさんに強引に勧められて転入試験を受けてやってきた。だけなのです」
「こちらへ」
貴子は生徒会室へつながる高速エレベータに瑞穂を導いた。
「なんだか、現実味の薄い場所に感じますね」
「わたくしたちには非常にリアルなのですけれどね」
「でも、やはり…映画か小説の世界に思えてなりません」
「言い換えてみましょう。世の中の出来事が現実感に溢れている…とはとても言い難いのではありませんか?新聞やニュースに出てくる事件など、わたくし達にとっては他人事つまり現実感に乏しい出来事として受け取っていますわ。では、貴女がこれから実体験するというわが校は非現実なのでしょうか?」
「何か禅問答の様に聞こえますが、あたしにしてみればどちらも非現実的なのかもしれません」
『チン』エレベータが最上階に到着したことを知らせるベルが鳴った。電子音ではなく本物のベルの音だった。
「ようこそ、宮小路瑞穂さん。恵泉女学院生徒会室、通称薔薇の館へ」
貴子は瑞穂の方に振り返ると大げさなポーズをとりドアの方に手を差し出した。
シャーっという音とともにドアが開くと、そこは薔薇が咲き乱れる空中庭園を持つ豪奢な作りの部屋であった。
「やっぱり、ここも現実感はありませんね。くすっ」
瑞穂はくすりと笑った。
「宮小路さま、お茶でございます」
貴子にすすめられるまま応接セットのソファに腰をかけた瑞穂に、君枝がお茶を出した。客用のティーカップはウェッジウッドだった。貴子のカップよりは質素な感じがするが趣味は悪くない青いカップであった。瑞穂は出されるままに一口すすった。
「まあ、おいしい、茶葉もいいけど淹れ方も上手だわ」
「ありがとうございます」
そう言うと、君枝は自分の席に戻っていった。瑞穂には少し警戒心をもっているような感じだった。
貴子は自分のロイやりコペンハーゲンからディンブラを一口すすって、カップをテーブルの上のソーサーに戻した。
「宮小路瑞穂さん。単刀直入に言います。御門さんと別れて、我々生徒会に参加しませんか?」
「…会長!」
君枝が驚く。
「お黙りなさい!君枝さん」
貴子が叱責する。
「あたしは、生徒会など人の上に立つような仕事は向いていません。それに3年生の今頃転入してきたような生徒にほいほい務まるようなものでも無いのではないですか?」
「転校当日にいきなり、生徒会に参加しろ。と言われてはいそうですかと即答できないのは理解しております。ですから、お返事は後日でかまいません。そろそろショートホームルームの時間です。教室までお送りいたしますわ」
貴子はそう言うと、瑞穂に向かい手を差し出した。
「いえ、大丈夫ですわ」
そういうと瑞穂は一人で立ち上がり、貴子の後に着いていった。一瞬貴子の目が、くっと動くが瑞穂はそれを知ってか知らずか、何も言わなかった。

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紫苑さまのひみつ

「瑞穂さん、そろそろ更衣室にまいりせんか」
「ええ、まりやさんがまだ来てませんけど、先に参りましょうか」
瑞穂は、よいしょっと声を出し机の横にぶら下がっている体操着袋を取り上げると、紫苑と共に更衣室に向かった。
「はあっはあっはあっ。あ、瑞穂ちゃんじゃなかった。お姉さま、紫苑さま。遅れましてごめんなさい」
「まりやさん、どうしたんですか?」
階段に向かう廊下を、息を切らしながら走ってきたまりやに、恐る恐る理由を聞いた。
「ごめんねー、また貴子のやつに、ねちねちねちねちと嫌味をいわれちゃってさー」
「ちょっと、まりやさん、言葉遣い!地が出てますよ」
瑞穂がたしなめる。
「あら、ごめんあそばせ、お姉さま」
ペロッと舌を出すまりや。
「うふふふ」
「紫苑さま~、何お笑いになってるんですか~」
「まりやさんと貴子さん。相変わらずの関係でうらやましいのです。わたくし、病気がちだったからそのようなお友達もいなかったの。」
「紫苑さま?ケンカ友達はあんまり精神衛生上良くないですよ?」
「紫苑さん……」
「今は瑞穂さんのおかげで、こんなにお友達が増えましたわ。わたくしとってもうれしいんですの。」

やがて更衣室にたどり着くと、いつもの様に紫苑とまりやが瑞穂をブロックして、着替えを始める。
とはいえ、かなりの生徒がすでに着替えを終えて校庭に出て行っているので、あまり隠さなくてもいいような雰囲気になっている。
「瑞穂ちゃん、たまにはブルマーで授業受けなよ」
「え?えええ?何言い出すのよ。まりや・・・さん?」
「わたくしも、瑞穂さんのブルマー姿見たいですわ」
「はい、これ瑞穂ちゃんの為に買っておいたブルマーだよ」
まりやは自分の体操服袋から「3A 宮小路瑞穂」と書かれたブルマーを取り出すと、着替え始めようとしている瑞穂に渡した。
「そんな~、紫苑さんまで…とほほ…」
がっくんとしゃがみこむ瑞穂。
「「あ、落ち込んだ♪」」
二人とも悪人ですよ。と瑞穂は落ち込んだ背中で抗議した。

「瑞穂ちゃん、ショーツの時だって見えないように処理してるんでしょ?
大丈夫だって、ショーツだってこんもりなんかしてないしさ。女の子でも土手高の娘もいるからさ」
まりやが瑞穂に耳打ちをする。
「な…何おっしゃってるの、まりやさん…?」
完全に目が泳いでいる。
(それはそれで、男の矜持をいたく傷つけられるんですけど…)どぎまぎしながら瑞穂はさらに落ち込む。
「まあ、女の子だって聖人君子なわけじゃないんだからさ、多少のお下品さだってあるわよ」
「うぐ…やっぱり着ないと駄目ですかぁ?」
そういうと、諦めたのかワンピースを着たまま、ブルマーを履き始める。
「あら、ま。こういう所はすごく女の子だよ。瑞穂ちゃんv」
まりやはにやにやしながらつぶやく。
恵泉女学院の制服はワンピースというと少々語弊がある。 バスト部は下に着込んだブラウスが露出する胸当て部の無いワンピースだ、厳密に言うと2ピースなのだがそれはさておき。
瑞穂が、そのスカート部を脱ぐとそこにはスラッとした美脚が現れた。
「う、相変わらずあんた女の敵ね」
まりやは自分がそそのかしてブルマー姿にさせたのを棚に上げて文句を言っている。
「まりやは運動してるから筋肉ついてるでしょ」
「うー、最近は筋肉がつきすぎて、子持シシャモなのよ」
「うあ!?ちょっ…ちょっと紫苑さん、何してるんですか!」
まりやが足元を見ると紫苑がうれしそうに瑞穂の足に頬ずりをしたり両手でなでまわしたりしている。
「あら、わたくし妬けちゃいますわ。こんなに綺麗なおみあしなんですもの」
「私は紫苑さんくらいの方が女性としては魅力的だと思いますよ。その。胸も大きいし…」
「むきーーー、瑞穂ちゃん!なんでそこであたしの胸を紫苑さまの胸を見比べるかなあ?せくはらよせくはらっ!」
「わたくしは、薬の副作用で太ってしまうの。だから」
「そういえば、紫苑さんはいつも食事の量が少なめですね」と瑞穂が言った。
自分は男だから運動部に所属しているまりや、由佳里ほどではないが、そこそこ食べる。というか、成人男性に近い自分が平均的女子の食事量で済んでいるのが我が身ながら不思議だ。
それからすると紫苑は、奏ちゃんほど少食ではないが、弁当箱は小さめ。学食メニューの時は、おかず交換レートが1:2位の分量比なので実際は半分ぐらいしか食べてないのだろう。

「えーと、ごめんなさい」
瑞穂があやまる。
「? 瑞穂さんは何も悪いことしてませんけど?」
「いえ…でもやっぱり…不躾な話題でした」
「そういえば、紫苑さまって体育のある日はいつもロングブラですね」
まりやが話題を変えようとした。
「ええ、やっぱり普通のブラだと胸を支えきれなくて、痛くなってしまうんです。わたくしとしては、瑞穂さんくらいの大きさがいいのですが」
「し…紫苑さん!そこで胸を揉まないでください。あん♪ 今日はへんな気持ちになったらまずいんですってば!」
「お姉さま、紫苑さま、まりやさん。予鈴がなりましてよー!早くお着替え済ませてくださいねー」
最後のクラスメイトがそそくさと更衣室から出て行き、すでに更衣室には3人以外残っていない状況だった。あわてて着替えをすますと校庭に急いだ。

キャーーーーーーーーーーッvvv黄色い歓声が上がる。それを聞きつけた校舎の中に居た生徒たちも窓から覗き込み歓声をあげる。
「え、なに?」
「瑞穂ちゃん、悩殺しすぎ」
「あ、お姉さま珍しいですね。今日はブルマーですか?」
「…瑞穂さん…ぐっじょぶ…」
「け…圭さんまで」

「お、宮小路。今日は強烈かわいい格好してきてるな。あんまり他の生徒を悩殺したらダメだぞ。授業にならなくなるからな。あっはっは」
「由美子先生まで…とほほー」
「はい、せいれーつ!。おはよう!じゃあ、今日の授業は新体操をやりたいと思います」

準備運動はペアで柔軟体操だ。身長の関係から瑞穂は紫苑と一緒だ。
「瑞穂さんがいらっしゃるおかげで、体育の準備運動も安心して出来るようになりました。感謝してますわ」
「この学院の同学年で165以上の方は瑞穂さんだけです。昨年もそう変わりませんでした。だから私、相手の方が押しつぶされちゃわないかと気が気ではありませんでした」
「そんなことないですよ。紫苑さん。」
「瑞穂さん、体重49キロだったじゃありませんか。」
「はい。そうですね。もう少しあってもいい気がするんですが。」
「あの、わたくし・・・ろ・・・68キロもあるんですよ・・・・」
「え?何が問題なんですか?」
「瑞穂さんの正体のこと忘れてましたわ。まあ、女心を判ってらっしゃらないのね」
くすりと笑うと、開脚前屈をしようとしている瑞穂の背中にきゅっと体重をかけてきた。
「し・・・紫苑さん!胸!胸が当たっています!」
「あら、女の子同士なんだから気にしないのよ。それにしても瑞穂さん柔らかいのですね。180度開脚してるの瑞穂さんくらいですわ」
「ええ、実は幼稚園くらいの頃に体操教室へ通わされまして。やっていたのは床運動とか平均台とかばかりでしたけどね」
「良家の子女はあまり活発な体操や運動はしない。と言うのもあるのでしょうね。わたくしも日舞とかはやりましたけど、激しい運動は禁止されてましたから。でも、今日の授業は楽しみですわ」

「この中に、新体操やったことあるものはいるか?」
おずおずと手を挙げる瑞穂。
「なんだ。この組は宮小路だけか。じゃあ、リボンの模範演技やってみてくれるか」
「はぃい?」
とんっ。誰かに背中を軽く押される。振り返るとにっこり笑った紫苑であった。
「がんばってくださいね」
ハートマークまで散っていた。

瑞穂はリボンのスティックをにぎると、くるくると回し始めた。
「きゃあーーーーっ」黄色い歓声があがる。
新体操のリボンは6m以上あるちょっと重い素材で出来ている。このリボンを試技中に絶対床に触れさせてはならないという、見た目の優雅さとは異なり結構ハードなスポーツである。
しかも手先は優雅に、女性らしさを忘れずに。
2分くらい、昔の練習を思い出しながら、リボンを高く投げタンブリングして受け取る。
「すごいな宮小路。1年から在学していたら新体操部作って、一緒に全国目指そうと思うレベルだな」
先生もちょっとびっくりしている。

この授業の話は尾ひれがついて、全校に広まってしまうのだが、このときはまだ瑞穂たちはそこまでは知らなかった。
「まあ、いきなりみんなにこのレベルをやってもらおうとは思っていないが、新体操は女性らしさを表現するスポーツだ。
宮小路は非常に女性らしい繊細な表現をしていたな。どこが女性らしいか気がついた人は居るか?」
「はい」と何人かが手を挙げた。
「指先が揃っていて、とてもきれいでした」
「他には?」
「柔らかい物腰で優雅でした」
別の生徒が答える。
「君たちに日舞をやっているものはいるかね?」
何人かの生徒が手を挙げた。もちろん紫苑もだ。
「新体操も日舞に通じる物がある。手先・足先に心を配るということだ。だらしがない格好をしていたりしたら、
いくら着飾ってもみっともないからな。とはいえ、新体操は楽しいから、まずはリボンを持ってやってみるところから始めよう。グループに分かれて始めなさい」

「ふふっ。瑞穂さん、また評価が高くなりましたわね」
紫苑が笑う。瑞穂のグループは瑞穂、紫苑、美智子、圭、まりやのオールスターだ。
「瑞穂さん、あだるとたっちで変身しなさいよ。」
「えっと、圭さん。そのネタついて行けないんですが…」
「瑞穂ちゃん、新体操なんてやってたんだ」
まりやがおどろく。
「え?一緒の体操教室通ってたじゃない?」
「え?そうだっけ?あたしは体育館のトラックコース走ったりするばっかりだったんで、新体操なんて覚えが無いよ」
「まりやは技術系じゃなくて体力系の方だったよね」

「で、どうしてこうなっちゃうのかなあ、瑞穂ちゃん…」
リボンでぐるぐる巻きになっているまりやが瑞穂をにらんで言う。
「まりやさん、縛られるのが好きなのですか」
「み…美智子さん。なに危険な表現炸裂してるんですか」
「瑞穂ちゃん、美智子さんや由佳里のエロエロ空間に染まらないでね。」
からまったままのまりやが文句を言う。
「ところで、もしかして…まりやさんって物事に対しておおざっぱなんですか?」
美智子が改めて問う。
「自慢じゃないけど、そうだわね。って、ほどけない。むきーーーーーーっ」
「まりやさん!そんなに無理してひっぱったら固くしまっちゃいますってば」
一生懸命ほどいている美智子さんがあわてる。
その後、からまったリボンからまりやが脱出できたのは5分後だった。

「ほ~れ。くるくるくる~」
さすが演劇部部長の圭は、体を使った表現力が豊かだ。しゃべらなければもっといいのだが。
「うふふ、瑞穂さん楽しいですわね」
紫苑がめずらしくはしゃいでいる。
紫苑はリボンをくるくると回しながら、小走りに走ったり、スティックを目の前に掲げて、下向きにして水平にくるくると回し始める。
「でもさ、こういうのって室内でやるもんだよね?」
まりやは疑問をもちかけてくる。
「多分、60人近い生徒が同時にくるくるとリボンをまわすのに、体育館が充分大きくないのではないかしら?」
瑞穂が答えた。
「うーん、そうかもね。結構場所とるしね。流石は名探偵瑞穂ちゃんよね。真実は100万コ!とか言って見得を切るのね」
そんな軽口をたたき合っていた時だった。
どさっ。
嫌な音だった。
瑞穂は音のした方向を振り返って叫んだ。
「紫苑さんっ!」
「「紫苑さまっ!?」」

「せ…せんせいっ!紫苑さまがっ!」
駆けつけた生徒が叫ぶ間もなく、瑞穂が紫苑を抱きかかえて、保健室へ掛けだした。
「お…おい!宮小路!」
先生があわてて瑞穂の後を追って保健室に向かっていった。
「み…瑞穂さん。また倒れてしまったのですね」
申し訳なさそうに紫苑は言った。
「大丈夫。もうすぐ保健室ですよ」
ブルマーから伸びるすらりとした足が韋駄天の如く駆けて行く。

「先生、紫苑さんは大丈夫なんですか?」
瑞穂は心配そうに保健医に訪ねた。
体育教師は紫苑の容態が悪くなかった事を確認すると、瑞穂に残って世話をするように言って授業に戻っていった。
「ええ、いつもの発作、といっていいのかしらね。どうしちゃったの十条さん?」
保健医は苦笑している。
「はい、授業ではしゃぎすぎてしまったのが原因です」
紫苑は答えた。
「今までのあなたらしく無いわね。ふふ。わかってますよ。宮小路さんの影響かしらね。以前のあなたと違ってとても明るくなってるもの」
「はい、そうですね。瑞穂さんのおかげですわ。うっ」
紫苑は少し顔をしかめて、胸の下を押さえた。
「十条さん。すこしブラを外した方がいいわ」
「はい」
そういうと紫苑はブラを外そうとした。
「くっ」
紫苑がまた顔をしかめると、保健医は瑞穂に言った。
「悪いけど、十条さんを手伝ってあげて」
「は、はいぃ」
何故か顔を真っ赤にする瑞穂。
「ん?どうしたの。宮小路さんは恥ずかしがり屋さんなの?」
「あ、はい・・・じゃなくていいえ。そんなことは」
「瑞穂さん、お願いします」
紫苑は体操着の上をまくりあげると背中を向けた。

ロングブラのホックは普通のブラが1個か2個で留めるところを9個くらいで留めている。ぽちっぽちっ。と、下側からブラのホックを外していく。
さすがに毎日ブラをするようになってからは、瑞穂もブラの留め外しは手慣れたものになってしまったので戸惑うことはないが、
果たして男がこんなに女性用下着の着脱に慣れてしまってもいいのだろうかと、瑞穂は疑問に思ってしまった。
「ふう。やはり締め付けがきついのはダメですね」
紫苑はひとごこちついたかのように、息を吐いた。
「そうね、十条さんはここに手術痕もあるし、隠したい気持ちは判るけどね。あんまり押さえつけちゃダメよ」
左の乳房下あたりを指さしながら保健医は言った。

「あ、あの・・・そんな話の時に私がいてよかったんですか?」
瑞穂はあわてた。
「瑞穂さん。いいのよ。あなたには聞いてほしかったんですの」
紫苑はにっこり微笑むと瑞穂に向かって、傷跡を見せた。左のバストのすぐ下に小さいけど手術の傷あとがあった。
「わたくしね、生まれつき肺に奇形があるの」
紫苑は続けた。
「!!」
瑞穂は驚いた。
「去年、エルダーに選ばれた直後だから7月はじめですわね。発作が起きて、胸を切って中に溜まった膿を排出しないと生死にかかわるという状況になってしまいました。
秋に一度学校には戻れたのですが、また再発して・・・結局出席日数が足りなくて留年してしまったんです」
紫苑の話は結構ヘビーだった。
瑞穂は紫苑が病気で留年をした。と言うことはまりやから聞いたが、病気がどんなものでどんな状況だったのかは知らなかった。
「わたくしも女のはしくれですから、やはり見られるとつらいのです。だから、皆さんにランジェリーを見られる体育の授業にはロングブラで登校してきたんですわ」
「そうね。十条さん。もともとロングブラはストラップレスでブラをしたいとき用の補正下着なんだから、もう少しアンダーバストが飾りになっているものにした方がいいわね」
保健医の先生は笑って諭した。
そういえばこの先生、緋紗子先生と仲が良かったんだよなー。ふんわりとした雰囲気で似たもの同士なのかな。と瑞穂は思った。
「ともかく、傷あとの件は皆に気づかれないようにした方がいいですね」
瑞穂は紫苑に尋ねた。
「じゃあ、これもわたくしたちだけの秘密と言う事にしましょう」
紫苑は微笑んだ。

(うふふ。瑞穂さんと共有する秘密がまた出来てしまいましたわ。)紫苑は独りごちる。去年、倒れてから腫れ物をさわるように距離をとっていった級友たち。
病気であることを知って、紫苑に負担を掛けないようにしてくれたのだと思うのだが、やはり寂しさは大きかったようだ。
エルダーに選出された後では、エルダーであるが故に後輩たちからも神聖化され距離をとられてしまった。

(瑞穂さんはそんなわたくしの心の壁をポンと乗り越えて来てくれた。去年あれだけ腐心していたのにもかかわらず、同級生から離れてしまった自分という存在を、一瞬でわたくしが渇望していた位置に戻してくれた。瑞穂さん。ありがとう。大好きよ。)紫苑は心の底から瑞穂に感謝した。

さて、宮小路瑞穂嬢がブルマー姿で校内を駆け回り、新体操のリボン演技で同級生たちを悩殺しまくり、あまつさえ紫苑を助けるために再び白馬の王子様を演じたという事は、ものの
半日もかからずに全校に広まった。これは瑞穂のエルダーの地位を揺るぎないものにするのに充分すぎたのは言うまでもない。しかも、恵泉女学院内に秘密結社『お姉さまにレオタードを着て新体操をしてもらう会(会長 御門まりや)』が結成されるというおまけまでついた。ちなみに会員数は745名というかつて無い規模の秘密結社だったという。

「ぼ・・・僕にレオタード着て新体操しろっていうの!」orz。瑞穂の落ち込みようはいかばかりであったろうか。だが瑞穂は知らない。もうすぐ体育の授業に水泳が登場し、また一悶着起きる事を。

(『紫苑さまのひみつ』おしまい。)

※:本当は倒れた人を抱きかかえて連れ回すのは良くありませんよ。瑞穂さん。

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始めました。

どもっ。あまのです。

「処女(乙女)はお姉さまに恋してる」のSS始めました。

ふふふ。なんか「冷やし中華始めました」みたいですね。

ラーメンと言えば、小笠原流作法にはハンバーガーやラーメンなどの

下々の方が食されるようなものを食べる時のマナーもあるのです。

(マリみての祥子さんが、ハンバーガーを目の前にしてナイフとフォークを

探していたのも小笠原流作法に則ってみると当然の事。奥が深いですわ。)

即席ラーメンの発明者安藤百福さんが亡くなったという記事が新聞に載って

いてびっくり。ラーメンつながりな話題ですが、ご冥福を祈ります。

脇道のそれちゃいましたが、ココはたま~に、煩悩にまみれた妄想娘の脳みそ

からあふれたモノを上げてみたり、習作の下書きをアップしてみたりします。

(下書きは某チャットの先生に見せたら消しちゃう事がありますが、運が良ければ

見られるかもしれません。)

というわけで。恵泉女学院物語のはじまり、はじまり~、

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