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「わんだーがーる みーつ みすてりあすがーる」(1)

「圭、お父さんな引っ越ししなくても良い仕事に転職しようと思うんだ。それでだなー。お前、引っ越しばかりして友達作れなかったろう?寂しい思いをさせたから、今度は大学まで一貫教育してくれる学校に転校するのはどうだろうと思うんだ。難易度がちょっと高いかもしれないが、恵泉女学院の編入試験受けてみないか?」
父が遺跡荒らし・・・じゃなく、大手建設会社おかかえの土地調査会社をやめると言い出したのは私が中学2年の春だった。父の仕事は、建設会社が大規模なビルやマンションを建築をする際に、地下に遺跡などが見つかった場合に調査するというもので、たまに私も調査を見せてもらっていたりした。
「・・・うん、わかった」
今までは、父の仕事の都合でいろいろな地方へ転校していったので大変であったが、その分新しい遺跡などの見学ができるので楽しかった。海外の現場などでは、あやしげな法具なども見つけたりもした。捨てられるよりはと、こっそり持ち帰っている。そういう楽しみが無くなってしまうのは残念だが、何よりも友達も欲しいので快諾した。
編入試験は、勉強のかいあって合格ラインぎりぎりであったが、なんとか合格した。
「初めまして、小鳥遊圭といいます。よろしくお願いします」
私はお嬢様学校というものを知らなかったので、必用最低限の事だけを話して後は黙っていた。
『日本人形みたいでかわいいー。』『おしとやかそうー』というのが私に対する彼女たちの印象らしい。木を見て森を見ず・・・だわね。
「じゃあ、小鳥遊さん、高根さんの横の席に座って頂戴」
担任教師が教室の後ろの方を指さすと、そこにはショートカットの女の子が居た。
「わたし、高根美智子。よろしくね。えっと圭さんでいいかしら?」
「いいわよ。高根さん」
「あら、私のことは美智子って呼んでくださらない?」
「ええ、美智子さん」
こうして、私の恵泉ライフが始まったのであった。

「転校初日で申し訳ないのだけれど、今日、教室の掃除当番よ」
聞くと、掃除当番とは聞こえが良いが、毎週テリトリーがローテーションするだけというものであった。クラスを4等分して、教室、美術準備室、中庭、焼却炉まわりを交代で掃除するという。お嬢様学校と言いながらこのように掃除が頻繁にあるのは、おそらく家庭では家政婦さんなどに掃除を任せっきりにしてしまう生徒をおもんばかっての所業なのであろう。
「拭き掃除が済んだら、机を並べるのよ」
と美智子さんが教えてくれた。
「小鳥遊さん、机は床タイルの仕切り線に合わせてくださいね」
クラスメイトが声を掛けてくれるが、彼女の名前は覚えていなかった。
なるほど。ショートホームルームの時に、なんでこんなに綺麗に机が並んで居るんだろうと、訝しんでいたのだが、考えてみれば理由は簡単だったな。修行が足りないね、私も。

「ねえ、圭さん。圭さんのおうちはどちら?」
掃除が終了し帰宅時間になった。部活動にはまだ参加していないので私も帰宅組。そろそろっと美智子さんが近づいてきて私に尋ねる。
どうやら、彼女は私に気があるのか、いろいろと話しかけてくれる。
「栗見ヶ丘三丁目だけど・・・」
「偶然ね、一緒の方向じゃない。一緒に帰りましょう」
美智子さんは、そういうと私の手を取って、歩き出そうとする。
「え・・・・」
私は驚いた。今まで友達と手を繋いだこともなかったので恥ずかしかった。
「あら、顔を赤らめている圭さん、かわいいっ」
美智子さんがからかう。顔が赤くなる?感情表現が苦手というか、ある種病気なのかもしれないが喜怒哀楽がほとんど表に出ない私にしては珍しい現象だ。
「かわいい・・・そんなこと・・・ないとおもうー」
むう。こんな触れ合いというのもいいものだな。私も美智子さんの手をぎゅっと握り返してみた。驚いた事に美智子さんの頬が赤く染まった。

一月も経つと私も学園生活に慣れてきたので、友達も増えてきた。この学校では友達を作っても、すぐに別れなくてもいい。その安心感は心地よかった。
「あの、圭さん。今度の日曜日、一緒に遊びに行きませんか?」
金曜日の帰り道、美智子さんが私を遊びにさそってくれた。恵泉に移ってから遺跡へ行くことがなくなり、家で籠もっていることが多くなった私にとっては新鮮なイベントになるだろう。
「ええ、いいわ。どこへ行くの?」
「駅前のKABURAGIYAなんてどうかしら」
「KABURAGIYAって駅前にあるあの気が遠くなりそうなくらい大きいデパートのこと?」
「ええ、そうよ。待ち合わせは9時半に、改札口前の時計の下でどうかしら」
「了解」
「じゃあ、デート用の気合いを入れた格好で来てね。じゃあ日曜日ね!」
本気とも冗談ともつかないような事を美智子さんは言って別れた。デートか。恵泉は女子校なので少なくとも素敵な彼氏と出会えるチャンスは学院内にはそうそう転がっては居ない。女の子同士で遊びに行くのをデートと称するのは、たぶんに男の人とのデートを夢想するこの年頃の乙女の妄想力というものであろう。乙女ってやつぁ、コレだから・・・

日曜日。私は、美智子さんに言われたからではないが、ちょっとだけ気合いを入れてみた。少し乙女ちっく。恵泉に入学できたことで、父が『普段着も実用一辺倒のものばかりじゃなく、ちょっとはお嬢様っぽい格好した方がいいんじゃないか?父さんな。圭のかわいい姿も見てみたいんだ』と買い込んできたものだ。フリルが端々についている装飾過多でちょっと恥ずかしい。

「あらあら、圭さんってば素敵な格好してますのね。うっとりしちゃいますわ」
美智子さんは、キュロットスカートにオーバージャケットを着て、ちょっとボーイッシュな格好をしている。
「美智子さん、いつもと雰囲気が違う…」
「うふふ。さあ、お姫様。お手をどうぞ」
そう言うと、美智子さんは手を英国紳士がする様に手を差し伸べてきた。私はおずおずとであるが、美智子さんの手のひらにそっと自分の手を添えた。
『ちゅっ』
美智子さんが私の手にキスしてきた。ドキン。心臓の鼓動が高まる。え?え?え?何?今のは一体…
「み…美智子さん、何するんです?」
僅かながら体温が上がった気がした。
「あら、お姫様や貴婦人に対する挨拶よ」
そう言って、美智子さんはいたずらっぽく笑った。
何だろう、どうしてなんだろう。美智子さんに何かされたり、微笑まれたりする度に私の感情表現が豊かになる?
手をつないで歩き出す。私の心臓がドキドキと鼓動を早めた。落ち着け!おちつけ私の心臓!美智子さんに変なところを見られるのは恥ずかしい。
恥ずかしい?どうして恥ずかしいの?私は自問自答しつづけた。
「ねえ?圭さん。なぁんでドキドキしてるの?」
うう。美智子さんは意地悪だ。私が困ることを次々としてくる。困るといっても嫌がることをしてくるわけではないのが、ちょっとくやしい。
ウィンドウショッピングの間中、いや今日一日中美智子さんにドキドキさせられっぱなし。
KABURAGIYAはとても大きいデパートで、目的もなくウィンドウショッピングでうろうろするだけならとても回りきれないほど。なので。
「圭さん、また一緒に遊びに来ましょうね」
と、美智子さんに誘われた。ダメ。美智子さんにはあらがえない。
別れ際に美智子さんはわたしのほっぺに、ちゅっ。っと軽いキスをしていった。
私は、その暖かい感触を忘れないように手で押さえて、しばらく立ち尽くしていた。

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