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びゅりほでぃず(ブログ版) (6)

 お気に入りになったにゃんこの着ぐるみパジャマに着替えて、ベッドに潜り込むと、思い出すのは今日の出来事。自分は男で、陵辱されることは無いはずだと判っていても恐怖体験が思い出された。
颯爽と現れた白馬の騎士。白馬には乗ってなかったし、騎士でもないけれど、拓美が助けに来てくれたという事を必ず思い出すことにして、恐怖を打ち消した。
そして最後には拓美が抱きしめて安心させてくれた事を思い起こして安心をした。

「拓美が居てくれて、よかった」

そう、ひとりごちるとようやく落ち着いて眠る事が出来た。

土曜日、瑞穂はタートルネックのセーターにジーンズ、パンツルックとスニーカーというユニセックス風のいでたちで出かけた。ハンドバッグを持って行ったのは、パンツのポケットにモノを入れる習慣を止めてしまっていたから。

「お待たせ…しちゃった?」

 待ち合わせの時間よりもうんと早い時間に来たのに、すでに拓美は待ち合わせ場所にいた。

「いや、今きたところ」

 こんな事を言っているけれども、本当は瑞穂よりもずっと早くきていたに違いない。拓美は瑞穂の事が心配でしようがないのだから。

「今日は遊園地で思いっきり遊ぼうな」

 拓美は駅の方に行こうとした。拓美の横に並んだ瑞穂は、すっと拓美と手を繋いだ。いつも紫苑と一緒に歩く時に手をつなぐので、本当に無意識に手が伸びたのだ。
 拓美は慣れていない為にドキリとしたが、瑞穂は気にせずニコニコと話しかけてきた。

「遊園地なんて、久しぶりだから楽しみだよ~」
「あ…ああ」
「うちは父様が忙しかったので、遊園地に家族みんなで行った記憶がないよ、母様も病弱だったから」
「そうか…」
「どうしたの?顔が赤いけど?」

 瑞穂は身長の差から、上目遣いで拓美をみつめつつ尋ねた。

「い、いや。なんでもないよ」
「ふーん、変な拓美」

 くすっと、瑞穂が笑った。その笑顔を見て、拓美の胸の奥で何かがコトリと動き始めた。

「電車の切符買ってくるね」

 そういうと、瑞穂は拓美から手を離し、切符売り場へ向かった。拓美は自分の手のひらを見つめ、瑞穂の温もりを反芻した。
 電車に乗るとシートはほぼ満席で、拓美は瑞穂に席を勧めて自分は立っていた。

「一緒に立っててもいいのに」

と瑞穂が抗議しても、いいからと言って座らせた。一緒に立っていては、瑞穂が自然と手をつないでしまうから、拓美はそれに対応しかねていたのである、
 次の駅でおばあさんが乗ってきたので、瑞穂は拓美に目配せしておばあさんを瑞穂の席へと導かせた。席を譲ると瑞穂は左手でつり革に掴まりながら、やはり、何の気なしに右手で拓美の空いている左手をつかんだ。

「あら、お嬢さんありがとう。あなたたち恋人同士なの?いいわね、初々しいカップルで」

 おばあさんはお礼をいいながら、瑞穂と拓美に声をかけてきた。

「い…いえ、単に学校の同級生なだけですよ」

そう、拓美が否定する。それを聞いた瑞穂の胸の奥で何かがちくりとした。

「あら?そう。それでも仲が良いのね」

「ええ、そうなんです」

 瑞穂はちょっとムキになって親密さをアピールしてみた。自分が一体何に焦っているのか瑞穂にはまったく判らなかったのだけれど。 
 一方の拓美は拓美で、否定した瞬間に、やはり心の奥で何かちくりとした。

「ふー、今日は楽しかったね」

 帰りの電車の中で瑞穂が満足そうに言った。隣同士で座っているので、顔が近い。拓美は瑞穂の顔を間近で見ていた。開正時代には気がつかなかったが、瑞穂のまつげは長く、目はぱっちり。ほっぺたから顎にかけて、髭などこれっぽちもなくつるつる。何よりもなまめかしく感じる唇は、やわらかそうに輝いていた。

「み…瑞穂って、意外にこわがりなんだな、キャーキャー言ってさ」
「こわがりというよりジェットコースターの類が苦手なだけです。」

 拓美は当たり障りの無い話題を振ってみてから、本題に入った。

「ご飯でも食べていこうか」
「ラーメン?」
「そういえば、瑞穂は開正の時も良くラーメン食ってたな」
「学院の食堂には汁物のメニューが一切ないし、寮も基本は英国式洋食だから、ラーメンが恋しくて」
「さすがは、お嬢様学校だな」
「生まれてこの方ラーメンを一度も食べた事ないって言うお嬢様も居るしね」
「へぇ。それはすごいな」
「じゃあ、おいしいラーメン屋さんに行こ」
「もしかして、行きつけとか」
「えへへ。バレた?」

「へい、いらっしゃーい」
「おじさん、こんにちわー」
「お、お嬢ちゃん。今日は彼氏とデートかい」
「うん、そんな感じだよ」
「よっしゃー、今日は記念におまけしちゃうよ」
「じゃあ、いつものラーメンね」
「ほい。そこの彼氏は?ニンニク入りチャーシュー麺で精でもつけるかい?」
「もう、おじさんったら」
「あはははー、お嬢様学校の娘さんには向かないネタだったね」

 店の店主とおしゃべりを弾ませる瑞穂を見て、拓美の心から平安が消えかかった。

「…えっと、ニンニク抜きのチャーシュー麺でお願いします」
「はいよっ」
「ここのラーメンはね。本当においしいから」
「たしかに、良いにおいが漂っててお腹が鳴るよね」
「ほいっ。ラーメンお待ちっ。チャーシューおまけしたからね。こっちの彼氏は大盛りな。がっつり喰わねーと女の子にサービスできねーぞ。ってデート中に言う台詞じゃないね。わりいねっ」

 二人は熱々のラーメンをちゅるちゅるとすする。

「やっぱりラーメンはいいよね。人類が生み出した文化の極みだよね」

 ラーメンを食べ終わると、満足そうに瑞穂は言った。

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