« 2007年3月 | トップページ | 2007年6月 »

処女はお姉さまに恋してる THE MOVIE 第3回

「厳島貴子さん達の事ですね。一番高い場所にいるから天上人なのかしら」
「まあ、それもありますけど近寄りがたいエリートという意味もあるみたいですよ。もともとは宮殿にいる殿上人が変化した言葉らしいわ」

緋紗子はクスリと笑いながら言った。クラスメイトはそんな事おかまいなしに、質問を次々と投げかけてくる。
「えっと、宮小路さま~。3サイズ教えてください~」
「彼氏居るんですか~?」
「好きなタイプはどんな男性ですか~」
「ひ…緋紗子先生?コレ、芸能人への質問コーナーかなにかですか?」
「まあ、基本的に女の子は噂好きだし、特に有閑階級な人は暇だからゴシップが大好きなのよね。あきらめて質問に答えてあげて」
緋紗子はくすくす笑いながら、先ほどまですっかり忘れていた有閑階級の特性を思い出して瑞穂に語った。

「ひぃ。…えっと、3サイズですがあ…87-57-89です。身長は173センチです。って恥ずかしいのですが…」
「カップサイズは何でしょう?」
「えっと…び…Bです。すみません」
何故か謝ってしまう瑞穂。
「体重は~?」
「ええと49キロです」
「好みのタイプは?」
「誠実で、王子様みたいに気高い志がある人です」
「きゃ~!」
王子様という単語に反応する女生徒達。
「宮小路さま自身が王子様よね~」
そうささやきあう。
「すみません。もう恥ずかしさでいっぱいなので、勘弁してくださいませんか?」
「彼氏はいるんですかぁ」
「い…いませんっ!」
瑞穂は顔が真っ赤になっている。
「きゃ~。かわいい~」
黄色い声が上がる。
「はいはい、そんなに騒いでいると宮小路さんが困ってるじゃない。はいっ。そろそろおしまい。じゃあ宮小路さん、そこの空いている席に座ってね」
「はい。先生」
教室の後ろの席に座ると、隣の瑞穂と同じくらいの背丈に見える女の子が声をかけてきた。
「わたくし、十条紫苑と申します。同じくらいの背格好の女のコでとっても嬉しいですわ。仲良くして下さいね」
そういうと、紫苑はにっこりと笑った。
瑞穂が一瞥すると、身長は瑞穂とほぼ同じ173センチくらいはあるだろう。濡れ羽色といった漆黒のロングヘアが目を引く。古風なイメージの女の子であった。

当然と言えば当然なのだが緋紗子の授業は徹頭徹尾浮ついた雰囲気で散々であった。

「ホントにもう、この学院の生徒ときたら世界最高峰の学府であるという自覚が足りないわね」
生徒会長は3-Aの狂乱状態の声が自分のクラスにまで届いてきたことに憂慮した。
しかし、そんな憂慮はほんの序の口であった事を後々思い知るはめになるとは、この時の貴子には思いもよらなかったのである。
宮小路瑞穂の噂は瞬く間に広まっていった。その伝搬には御門まりやと厳島貴子との一戦が大いに関係していたからである。だが現在の院内の主な話題は、御門まりやと厳島貴子の一騎打ちの話ではなく、宮小路瑞穂が、生徒会に入り天上人になるかどうかであった。

「はぁ~。まりや、この学校どうなってんのよ?みんなおかしいよ。」昼休みになり昼食を取るためと言って休憩時間毎の質問攻めからほうほうの体で、やっと食堂に逃げ出してくると、瑞穂はぐったりとしてサンドウィッチを見つめながらため息をついた。
「まあ、瑞穂ちゃんは世間一般の普通の共学に通ってたもんね。ここはお嬢様学校。普通の学校とは違うわさ」
「でも、朝の生徒会長といい、担任教師といい、クラスメイトといいもうめちゃくちゃだわ」
「まあまあ、ぼやきなさんなって、瑞穂ちゃんあんた目的があってここに来たんでしょ。そのくらい我慢しようよ」
「ま、まりや!目的の事は誰にも言ってないでしょうね。どこから漏れるか判らないんだからね」
瑞穂は辺りを見回してまりやにささやく。

| | コメント (0)

びゅりほでぃず(ブログ版) (17)

翌日。つまり結婚式当日。空は青く晴れ上がり結婚日よりだった。ジューンブライドも良いが、やっぱり晴れてこそ。
 結婚式は恵泉女学院のチャペルで行われるので、控え室は恵泉女学院女子寮に割り当てられた。花嫁の控え室は、面倒臭がられたのか瑞穂の部屋であった。

「お姉さま、素敵なのですよ~。奏、うっとりしちゃいますなのですよ~」

 ブライドメイド役を仰せつかった奏は舞い上がっている。奏自身もブライドメイドのレース仕立てのドレスがかわいらしい。

「デコルテラインもきれいに決まってるし、なによりもドレスが古くさくないのがすごいわね。小母様の趣味ってわたしよりも良かったのかしらね」

「モデルさんみたいで綺麗なのですよ」

 ふにっふにっ。紫苑が胸を揉みしだく。

『瑞穂さん?これはホンモノですか?』

『ええ、紫苑さんがお休みしていた期末試験の後に豊胸手術してきました』

『すこし揉み心地が違ったので。以前の揉みごたえも捨てがたかったのですが、今の揉みごたえも良いですわね』

『あの~紫苑さん。今はホンモノの胸なので、すごく…感じちゃうので、すみませんが…』

 紫苑は残念そうに手を離した。

「じゃあ、奏ちゃんは小父様の準備室へ行って声をかけてきてね。最後の仕上げしちゃうから」

「わかりましたなのですよ~お姉さま方」

 そういうと奏ちゃんは瑞穂の部屋から出て行った。

「瑞穂さん。わたくしたちはあなたの決断を尊敬しますわ。勇気がないと出来ないのですよね」
「うんうん、瑞穂ちゃん。最初はびっくりしたけど。あたしたちは瑞穂ちゃんの味方よ」
「ありがとう。紫苑さん。まりや」
「でも、男の方同士で子供はできるのですか?」
「ええと、なんとかなるみたいですよ。拓美にいわせるとビバ!テクノロジー!なんだそうですけど」
「まあ、よくわからないですけど、瑞穂さんの子供なら、きっとかわいいですわね」
「ええ、紫苑さんもまりやも遊びに来て下さいね。あ、ごめん。まりやの事は怖い人って先入観があるかも」
「なにーっ!このバカ瑞穂!何をふきこんだっ!言えッ!言え~っ!」
「やめふぃえー」
口をむにむにと横にひっぱるまりや。
「お化粧が崩れちゃったじゃない」
文句を言ってみる。
「しょうがないわね」
そう言いつつ、まりやはメイクを直した。
メイクが直ったら、タイミング良く奏ちゃんがドアをノックした。

「瑞穂お姉さま。新婦はチャペルに向かってくださいなのですよ」

 ベールをおろして、部屋を出る。奏は瑞穂のドレスのスカートとベールをしずしずと持ち上げると、瑞穂にチャペルに向かうように促した。この後、チャペルの入場口のところで父親の慶行にエスコートされながら祭壇に向かうのである。

「瑞穂。母さんにそっくりだ」

 父は目を細める。瑞穂は父親に向かってにっこりと笑う。

「父様。わたしのわがままを聞いてくれてありがとう」
「なーに、子供の幸せを願わない親はいないさ」

顔を赤らめる瑞穂を見て、慶行は緊張していると思ったようだ。

「緊張しなくてもいいぞ。そんなところまで母さんとそっくりだな」

 ヴァージンロードをしずしずと歩むと祭壇にはシスターの格好をした緋紗子と新郎がすでに待っていた。

「…あなたは、健やかなるときも病めるときも宮小路瑞穂を妻とし、生涯添い遂げることを誓いますか?」
「誓います」

拓美はさわやかなバリトンで答える。

「宮小路瑞穂、あなたは健やかなるときも、病めるときも何があろうとも、菅野拓美を夫とし、生涯添い遂げることを誓いますか?」
「はいっ。誓います」

瑞穂は鈴の音のような美しいアルトで答える。

「では指輪の交換を」

 そういうと緋紗子は結婚指輪の乗った盆を差し出す。拓美と瑞穂はそれぞれ相手の指輪を取るとお互いの指にはめた。

 緋紗子が促す。拓美は瑞穂のベールを上げ、瑞穂の肩を両手でしっかりと支え、キスをしようとする。瑞穂は目を閉じてそれに応えようとする。
 拓美の唇が瑞穂に触れた瞬間、教会の中は嬌声に包まれた。

『きゃーーーーーーーーーっ』

。誓いのキスが終わると瑞穂はお姫様だっこをされて、参列者の間を通り抜ける。最後の山場のブーケトスは君枝が受け取った。

「え?え?え?私が次のお…お…お嫁さんですか?か…会長のおよめさん…?」

 興奮のあまり、何を言っているのか判らない状態になっている君枝であった。
 隣に居る貴子は、それを聞いてまんざらでは無い気がした。うふふ。瑞穂さんのせいですね。と貴子は晴々とした気持ちで思った。

 宮小路瑞穂として結婚はしたが、そのうち鏑木瑞穂として社会に復帰せざるを得ない部分も出てくるだろう。なにせ鏑木慶行の一粒種なのだから。
 瑞穂自身はかわいい奥さんとして、拓美と仲良く暮らせればと思っている。今日も拓美の大好きなご飯をつくって一緒に食べて、そして思いっきり愛して貰うんだ。

「あー、こんな毎日がずっと続けばいいのに…」
                            おしまい。

| | コメント (2)

« 2007年3月 | トップページ | 2007年6月 »